小林信也(作家、スポーツライター)

  野球の国・地域別対抗戦、第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕した。日本代表「侍ジャパン」は、一次ラウンドを快調に突破した。キューバ戦は前半から優位に立ち、終盤は乱戦気味になったものの、打ち勝って難敵を倒した。 

 オーストラリア戦は先発の菅野が先制ホームランを浴び、打線も12連続凡打に抑えられるなど重苦しい展開だった。が、松田の犠牲フライで同点に追いつき、中田のホームランで勝ち越すと一気にムードが明るくなって、危なげなく連勝スタートを果たした。休養日、中国がオーストラリアに敗れた時点で、日本の二次ラウンド進出が確定した。

 強化試合では負けが続き、選手も勝利の十字架を背負って暗い雰囲気だったが、いざ大会が開幕すると、吹っ切れたように伸びやかなプレーを見せている。

 キューバ戦は、セカンド菊池の好守(ダブルプレー)に始まり、センター青木のファインプレーもチームを盛り上げた。キューバの外野陣も立て続けに超美技を見せ、試合自体がスリリングな展開で活気づいたことも、侍ジャパンが本来の躍動を取り戻した一因かもしれない。何より、野球は面白い、カッコいい! という、素朴な感動が見る者を興奮させた。

 余談だが、9日の木曜に吉祥寺の小料理屋さんに行くと、「前日のお客さんがものすごく少なかった。外の人通りもいつもに比べて格段に静かだった。みんな自宅に帰ってWBCを見ていたからではないか」と女性店主が真剣な顔で分析していた。確かに、オーストラリア戦の視聴率が20パーセントを超えたとの報道もあった。WBCで野球人気回復の勢いがつけばうれしい。

 戦前のチーム状況から推して、私は勝つとすれば「打つべき選手のホームラン」と、「松田のようなお祭り男に火が点くこと」と期待していた。まったく、それが現実となって、侍ジャパンに勢いがついた。
キューバ戦の5回、3ランを放ちベンチ前で「熱男」ポーズをとる松田=3月7日、東京ドーム
キューバ戦の5回、3ランを放ちベンチ前で「熱男」ポーズをとる松田=3月7日、東京ドーム
 四番・筒香は2戦連発、中田にもホームランが出た。山田の当たりはビデオ判定の結果、二塁打になったが、中心打者にそれぞれ快打が出た。そして何より、松田が初戦4安打、2戦目も貴重な同点犠飛を放ち、調子に乗ったのが大きい。

 沈黙と爆発の差が激しいという不安はあるものの、小久保監督としては、攻撃面でこれ以上ないスタートが切れたと手応えを感じただろう。