下條正男(拓殖大教授)

 韓国の憲法裁判所が「罷免」の結論を出したことはやはり、世論に押されたと言うことでしょう。これまでに廬武鉉も大統領だった際に弾劾訴追を受けましたが、その時の世論はマスコミも含めて罷免への反対が多かった。

 でも、朴槿恵の場合はその逆だったために罷免になったとみるのが妥当です。要は多くの人がなんとなく感じていると思いますが、韓国の司法そのものが本来の機能を有していない。そうした未成熟な国であることの認識が日本人はまだ薄いだけに、韓国で起きる一連の事象に驚くわけです。

 そもそもアメリカや日本といった国は民主主義というものをきちんと経験していていますが、中国や韓国といった国々は本当の民主主義を知らないんです。それでいて中央集権的な政治なので、支配する側と支配される側の構造しかないから常に双方が反発する。
朴槿恵大統領の罷免を憲法裁判所に求める集会の参加者=2017年2月、ソウル中心部(共同)
朴槿恵大統領の罷免を憲法裁判所に求める集会の参加者=2017年2月、ソウル中心部(共同)
 結局、今回も国民が反発して朴槿恵政権を潰したわけですが、教訓を生かして次のステップに上げる体制を作れるかというと、できないでしょうね。なぜなら壊すことはできても作ることはできないからです。それが韓国や中国の傾向で、だから絶対的な権限を持つ大統領を利用して、近親者が不正に手を染め政権を危機に陥らせることを繰り返してしまうんです。

 アメリカの場合であれば、大統領の任期ごとに軌道修正をすることができる。それは市民権や民主主義というものを知っている人たちがいるからです。でも韓国や中国などは社会が本当の民主主義を経験したことがないんです。韓国は急に独立してしまって、プロセスを経て国を作ったことがないので、どうやればいいかわからない。

 だからいったん混乱状態になると抑える人がいない。そこを我々は理解しておかないといけないのに、日本の評論家の多くはあの韓国での「ろうそく集会」を民主主義の典型だと言う。それは全く違いますよ。韓国はまだ壊すばかりで作ることができないんです。民主主義が浅いために何をどうしていいのかわからず、今までは反発勢力を押さえつけるだけだったわけです。

 では、なぜこうした状況になっているかを考えると、明治維新以降、朝鮮や中国、ベトナムなども明治維新をモデルにしたけど、全部失敗したんです。準備ができていないのに、急に中央集権を地方分権に変えようとしても無理があった。

 これをどうかしないといけないと動いたのは伊藤博文だった。朝鮮半島を近代化しようと政策を実行し、一定のレベルまでいったが、協力する人たちが戦後に「親日家」の烙印をおされてしまった。そんな状況が続く中で、日本が先の大戦について一方的に謝罪する「村山談話」が出てきたために、韓国のブレーキが効かなくなり、元に戻ってしまったんです。

 日本側の対応のまずさを象徴的するのは、慰安婦問題です。日本側が10億円を拠出して、せっかく合意に至ったかと思いましたが、結局、釜山に慰安婦像を設置する事態になった。日本の駐韓大使と釜山の総領事が帰国しましたけど、2カ月間も経過してしまい、タイミングを完全に逸してしまった。