水野俊平(北海商科大学教授)

 韓国の憲法裁判所が、韓国の国会で弾劾訴追され職務停止中の朴槿恵大統領について、憲法裁判官8人(欠員1)の全員一致で罷免を認めるとの審判結果を下した。韓国憲政史上初となる現職大統領の罷免という厳しい審判が下された理由は、朴大統領が部外者であるはずの知人女性を国政介入させたことに加え、国務遂行における収賄や職権乱用などの疑いが認められたからである。この決定により、朴槿恵大統領は罷免されて即時失職し、5月9日までに大統領選挙が実施される運びとなった。

国会が弾劾訴追した朴槿恵大統領の罷免を言い渡した韓国憲法裁判所の法廷
=3月10日、ソウル
国会が弾劾訴追した朴槿恵大統領の罷免を言い渡した韓国憲法裁判所の法廷 =3月10日、ソウル
 韓国全土では連日連夜、弾劾賛成派と反対派による集会やデモが相次ぎ、双方が互いに刺激を与え合いつつ論争が過熱した。昨年12月9日に韓国国会で弾劾訴追が可決されてから憲法裁判所の決定が出るまで、国論を二分する対立が続いてきた。とはいえ、形勢は賛成派が圧倒的多数だった。憲法裁判所の審理と並行して、特別検察官による朴大統領への一連の疑惑の捜査も進んでおり、その過程で明らかになった数々の不正と腐敗に国民は呆れ果てている。

 一方の反対派も、朴大統領の指導力欠如や無能ぶりは半ば認めており、弾劾手続きに対する問題提起や弾劾賛成を主導してきたリベラル派に対する反発のみならず、賛成派のデモによる国家秩序の混乱に対する反感や、この間隙に乗じて北朝鮮が何か仕掛けてくるかもしれないという不安感が高まっている。言うなれば、決して朴政権に満足しているわけではないのである。

 弾劾に賛成か、反対かの論争が渦巻く中で下された現職大統領の罷免決定。この日はいわば「韓国憲政史上、最も長くて重い日」となったわけだが、一連の経緯について、韓国人はどう受け止めているのか。私の周辺の韓国人の生の声を拾ってみると、興味深い答えが次々と返ってきたので、ぜひ紹介したい。