西岡力(東京基督教大学教授)

 朴槿恵が弾劾訴追されたのは、朝鮮日報、東亜日報、中央日報という韓国の保守系新聞が誤報を繰り返しながらも、左派と同じトーンで朴槿恵叩きをやったことが一番の原因じゃないでしょうか。

 今回、北朝鮮が朴槿恵の罷免決定から1日もたたないうちに北朝鮮が速報を流しました。昨年10月以降、韓国のマスコミが大々的に「崔順実スキャンダル」を報道し始めてから北朝鮮のメディアは継続して朴槿恵を弾劾すべきだ、逮捕すべきだと発信し、韓国のマスコミはよくやっていると書いていたんです。

朴槿恵元大統領
朴槿恵元大統領
 朴槿恵退陣のデモを主催した団体の主体は親北の左派です。その中心勢力は民労総(全国民主労働組合総連盟)という極左の労働組合。国家保安法の反対やTHAAD配置の反対、北朝鮮と連邦制で統一すべきだと掲げ、デモをやってきた組織です。

 一昨年には火炎瓶を投げたり、鉄パイプを振り回したり、過激なデモをやっていて、国民の支持はあまり得られなかったけど、今回は10月に保守系の新聞が大規模なキャンペーンをやったために、朴槿恵弾劾というスローガンに変え、暴力的な行動を謹んだ。

 でも毎週土曜日に大集会をやって、その大集会の主催者もこの労働組合だったんですが、過激な主張を隠して「ろうそくデモ」をやったので、一般国民もマスコミの報道を信じてどんどん集まった。それに国会は与野党ともにろうそくデモの大衆動員を恐れて、拙速に弾劾訴追をやってしまったということです。

 今回のデモの主催者がつくった主題歌は「これが国か」というタイトルですが、崔順実みたいなおかしなおばさんが国政を篭絡するなんて、これが国なのかという歌で、その歌を作詞作曲したのがユン・ミンソクというシンガーソングライターだった。

 ユンは国家保安法違反で複数回逮捕されており、その理由のひとつに「金日成主席は人類の太陽だ」という歌を作ったという事実がある。この主題歌をつくったのはこんな人だということを一切報道せず、純粋な政府に対する反対運動なんだと書いた。

 他にも「Kスポーツ」という財団をつくって、その財団を支配していた理事長が崔順実が通っていたマッサージ屋のおやじさんを使っていたと言っていたが、実はその理事長は、ソウル大学で博士号をとった体育学の専門家で、マッサージなんかしたことがない。いまだにその誤報を訂正していなくて、そういう印象操作をたくさんやって国民を怒らせた。ただ、国民の多くが弾劾に賛成しているのは、こうした誤報を信じていたこともあります。