小坂実(日本政策研究センター研究部長)


 保育士の世界に男性が参入するようになって久しいが、男性保育士による女児の着替えやオムツ替えの是非をめぐって、ネット上でホットな論争が起きている。事の発端は、千葉市が今年1月に策定した「千葉市立保育所男性保育士活躍推進プラン」。要は、保育所の「ダイバーシティ」(多様性)や「男女共同参画」の推進のために、男性保育士にできない業務をなくそうという話である。
※写真はイメージ
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 産経ニュースによれば、この市の方針に対して「女児の着替えを女性保育士に望むことは保護者として当然」などの不安を吐露する声が上がる一方、「男女共同参画社会の実現に向けて必要な施策だ」など、プランの策定を評価する意見も寄せられているという。

 そこで、実際に「プラン」をのぞいてみた。まず、前書きで「男女が互いに人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなく、個性と能力を発揮することができる社会の実現が、緊要な課題となっています」と男女共同参画社会の理念に言及している。その上で「性差に関わらない保育の実施」と銘打ち、「保育士としてのキャリア形成のため、男性保育士も女性保育士と同じように、こどもの性別に関わらず、保育全般を行っていきます」と謳っている。

 プラン策定の背景について、熊谷俊人千葉市長は2月19日付の東京新聞紙上で、「男性保育士による女児のおむつ交換や着替えなどをやめてほしいと保護者から要望があり、トラブルを避けるため、男性保育士が外されるケースがあることを知った。特別な理由がないのに男性保育士を外すことはあり得ないと考えた」と語っている。

 要するに、これまで市立保育所の現場は、保育士の性別にこだわる保護者に一定の配慮を示してきたわけだ。そうした配慮を「男女共同参画」や「ダイバーシティ」を大義名分に、一刀両断に断ち切ることが、プランの一つの狙いと言えそうだ。

  そもそも、男性保育士による女児の着替えやオムツ替えといった問題は、保護者や場合によっては幼児自身の受け止め方にも個人差があろう。こうしたデリケートな問題は、行政が上から目線で特定の「正義」を振りかざして解決を図るよりも、現場の経験知にもとづく柔軟な対応に委ねるのがベターだと思われるが、ここではこの議論に深入りしない。