サルマン国王との会談の萌芽は、昨年9月、13機の飛行機、500名の派遣団とともに現れたムハンマド・ビン・サルマン・アル・サウド副皇太子と孫社長が日本で会談したことにある。サウジアラビアの経済改革と軍事、外交を握る副皇太子は。イニシャルから、「MBS」と呼ばれる。MBS副皇太子は、「我が国は石油中毒に陥っている」と述べ、2030年までに脱石油、投資立国を柱とする「ビジョン2030」を掲げる改革派として知られる。

 3ヶ月前の、2016年6月。当時のオバマ大統領と会談し、IS=イスラミックステートへ軍事作戦での協力を語ったMBS副皇太子は、シリコンバレーでフェイスブック、グーグルなどの経営陣と会った。IT投資に長けたパートナーを探しているMBS副皇太子に、シリコンバレーのCEOたちは孫社長の名を挙げ、推薦したのである。

 日本での会談の6週間後、2人はサウジの首都リヤドで会うことになった。総額約11兆円(1000億ドル)という、この種のものとしては史上最大のプライベート・ファンドの設立計画をスタートさせるためだ。シリコンバレー並みのスピードである。

3月14日、会談したサウジアラビアの
サルマン国王(左)とソフトバンクグループの
孫正義社長
 10月14日、ソフトバンクグループは、サウジアラビアの政府系投資ファンド「PIF」と共同で、最大11兆円規模のファンドを設立すると発表した。ソフトバンクは5年間で250億ドル(約2・6兆円)以上を、PIFは最大で450億ドル(4・7兆円)を出資するという計画である。

 米国ではグーグルやインテルなどシリコンバレーのIT企業が新興企業への積極投資を続けている。だが、米国に中国、日本、欧州を加えた主要4カ国・地域の2015年のベンチャー投資額でも約10兆円である。サウジアラビア、MBS副皇太子とともにぶちあげた構想は、世界一が好きな孫社長らしくまさに世界最大級のプライベート・ファンドである。

 計画が実現すれば、孫社長が考える、IoTの未来に投資できるようになり、サウジはその果実を得て、「ビジョン2030」が目指す「投資立国」実現へ一歩を進めることになる。

 2014年、「デジタル・インディア」を掲げたモディ首相と会談。インドへ10年で1兆円の投資を約束した。大きな改革ビジョンを掲げた国家リーダーと意気投合し、そのビジョン実現をサポートするというのはいまや孫社長の得意技になりつつある。

 モディ首相のときは互いの携帯電話番号を教えあった。サルマン国王はともかく、シリコンバレーの経営者とも親交のあるMBS副皇太子なら携帯電話で直接話せる仲であるように思える。11兆円規模のファンドは、MBS副皇太子の「ビジョン2030」にちなんだのか「ソフトバンク・ビジョンファンド」と名づけられた。