孫社長の実質パートナーである、MBS副皇太子には不安もある。MBS副皇太子は王位継承権で第2位とはいえ、権力基盤はまだ盤石ではないのだ。ソフトバンク・ビジョンファンド設立も経済対策での実績作りを急いだ面もあるとの情報もある。

 「ジャック・ウェルチ(アメリカ、GEの前CEO)に『次は誰が良いか』と聞かれたので、イメルト(GEの現CEO)がいいと推薦した。それをイメルトに話したら『私がCEOになれたのはマサのおかげか』と喜んでいたよ」と私に語ったことがある。孫社長の推薦がどこまで効果があったかはわからないが、率直に話したことは間違いない。孫社長のことだから、MBS副皇太子のすばらしさをサルマン国王に話したかもしれない。

 サウジアラビアの財政状況はかなり深刻である。歳入の七割を原油輸出に頼っているが、このところの原油安で2年連続歳入を歳出が上回っている。蓄積したオイルマネーを取り崩し、欧米の金融機関からの融資で賄っている。IMFは今の水準の原油安が続けば、「後五年でオイルマネーの蓄えは底をつく」と指摘している。

羽田空港に到着したサウジアラビアのサルマン国王(左)
=3月12日夜(代表撮影)
 そこで、MBS副皇太子が起死回生の策として考えているのが、国営石油会社サウジアラコムの株式上場である。サウジアラコムは時価総額200兆円(約2兆ドル)の会社になると予想され、2019年の上場をめざして準備中である。

 上場はニューヨーク、ロンドン、アジアでは香港を考えられており、残念ながら日本の東京市場は出遅れている。MBS副皇太子来日の際に政府関係者が東京証券取引所の上場を依頼したり、2016年10月に経済産業省のミッションがサウジアラビアを訪れたが、結果は芳しくなかったようだ。

 孫社長とサルマン国王、MBS副皇太子の関係がより密となれば、サウジアラコムが東京証券取引所で上場する可能性も高くなるだろう。これは日本の株式市場の活性化と、中東最大の石油供給国と日本の関係が強化されることになる。サウジアラコムの東京証券取引所での上場が実現すれば、今回の孫社長とサルマン国王の会談は大いなる戦略的意味を持つことになるだろう。