2017年03月16日 16:11 公開

マット・マグラス、環境担当編集委員

2013年1月にひと月近く中国東部を覆った大気汚染は、前年秋に北極の海氷が減少したことと関係しているという報告が発表された。

科学誌「サイエンス・アドバンセス」に掲載された研究によると、煙霧が通常より長く停滞したのは、海氷の融解と積雪量の増加によって風の循環パターンが変化したからだという。

北極の氷が気候変動のために減少し続ければ、同じような事態が繰り返されるだろうと研究者たちは指摘。そうすれば、たとえば2022年開催予定の北京冬季五輪にも影響が出る恐れがあると研究チームは警告している。

排出パズル

近年の中国では大気汚染問題が相次いでいるが、2013年1月には異例なまでに長期化した。

広範囲にわたる煙霧は1カ月近く居座り、74主要都市の約7割で大気中の微粒子による汚染度が連日のように規制水準を超えた。

これに先立ち中国は、大気汚染の主な要因となる石炭火力発電所からの排出規制を導入していただけに、なぜ煙霧が続くのか専門家たちも当時は首をひねっていた。

しかしその後の研究で、2012年末に北極の海氷が記録的水準で減少したことや、シベリアの積雪量が急増したことによって、気流循環パターンが乱れ、中国東部の平原上空で大気が停滞したことが判明したという。

論文筆頭筆者の米ジョージア工科大学のユハン・ワン教授は、「北京のような地域では冬になると、北西の強い風がさかんに吹きまくる。南に移動するこの冷たい空気の強度と位置は、気圧の尾根によって変わる。海氷や雪の変化が作用すると、気圧の尾根は弱まり東へ移動する。2013年1月には、冷たい空気が中国東部に流れ込む代わりに、朝鮮半島や日本へと移動した」と説明する。

研究チームは過去35年間の気流条件を点検。2013年に気流循環が乏しかったのは、異例だと証明した。

さらに気流循環の停滞に寄与するかもしれない他の気象要因を調べた結果、北極の氷の現象とユーラシア大陸の森林部の降雪が、異例な煙霧の重要な要因だったとデータが示していることが分かった。

北極の氷とシベリアの降雪の影響を切り分けて比較することはできなかったが、2つの要因が組み合わさったことで煙霧の悪化に拍車がかかったことは確かだという。

「夏には粒子状物質が減っていると証拠が示しているが、冬には明確な変化が見られない。極圏の氷と雪の変化が影響していると考えている」とワン教授は話す。

研究チームは、地球の気候変動によって北極の海氷は減り続け、そのために煙霧発生条件も継続するだろうと指摘。このことは2008年の北京夏季五輪で大気汚染の影響が懸念された以上に、競技会場が広範囲にわたる2022年の北京冬季五輪に影響するはずだという。

「中国政府は過去4年の間に温室効果ガス排出量を大幅に減らしてきた。減らしてこなければ、同程度もしくはさらにひどい黙示録的な事態が起きていただろう」とワン教授は言う。

「そうならなかったのは排出量を削減したからで、オリンピック中の空気を清浄にしたいならば、これまでの想定よりも大幅に排出量を減らす必要がある」

論文の執筆者たちは、粒子状物質の削減に中国がさらに対策を講じる余地はあるが、北極の海氷減少の原因となっている温室効果ガスの削減には世界全体の取り組みが必要だと指摘している。

(英語記事 China's 'airpocalypse' linked to Arctic sea ice loss