2017年03月16日 17:56 公開

「ならず者国家」。「喫緊で最大の脅威」。北朝鮮は様々に形容されてきたが、褒める言葉はあまりない。

北朝鮮の政府は、住民を残酷に抑圧する一方で、核兵器開発を脇目も振らずに追求していると非難されてきた。

最近では、5回目の核実験を行い、複数のミサイルを発射し、化学兵器を使って国家トップの異母兄を暗殺したと広くみられている。

しかしなぜ北朝鮮はこれほど問題なのか。そしてなぜ解決策が見つからないのか。

戦争から国が誕生

北朝鮮は1950~53年の朝鮮戦争で半島が2つに分断された際に、国となった。最初の指導者は、一党独裁国家を率いた金日成国家主席。現在の最高指導者、金正恩・朝鮮労働党委員長の祖父だ。

今でも世界で最も貧しい国のひとつで、経済は政府に統制されている。住民は外国メディアに触れることができず、特権的なごく一部を除いては国外に出ることもできない。

何より気がかりなのは、核実験を5回重ね、ミサイル発射実験を繰り返してきたことだ。核ミサイルを造るという究極的な目標へ、近づいていることが分かるからだ。

では交渉は

何回か繰り返されてきた。最も最近の中国、韓国、日本、ロシア、米国による6者協議は、当初は有望視されていたものだ。

北朝鮮は、経済援助と制裁緩和、テロ国家指定解除などと引き換えに、核開発を中止すると一旦合意。2008年6月には、寧辺のプルトニウム生産施設で原子炉の冷却塔を爆破するまでして見せた。

しかし事態はそこから、失速する。米国は、北朝鮮が核開発の全容を公表していないと批判。北朝鮮はこれを否定しつつ、核実験を実施した。

このため2009年以降、実質的な対話は行われていない。

英シンクタンク「チャタムハウス」(王立国際問題研究所)北東アジア担当上級研究員のジョン・ニルソン=ライト博士は、最近の挑発行為から判断して、北朝鮮は現時点では交渉するつもりがないようだと話す。

「金正恩が今はひたすら軍の刷新を推進しようとしているからで、合理的に考えれば物事を先延ばしした方が向こうの利益にかなっている」

経済的圧力には効果があるはずでは?

国連と複数の国はすでに、北朝鮮の兵器開発や海外送金機能を対象に、制裁を実施している。最も最近の制裁措置は昨年11月で、中国に対する北朝鮮の石炭輸出を約6割削減したほか、銅やすず、銀、亜鉛、彫像の輸出も禁止した。

一方で、北朝鮮は国際社会からの支援がなければ住民に食料を提供できないのだが、この支援も近年は、緊張悪化と共に量が減少している。

しかしこうした制裁措置を重ねても、北朝鮮の軍事対応が失速しているようには見えないと、ニルソン=ライト博士は言う。

同じ制裁でも、北朝鮮の機能を支える中間的な存在(たとえば中国の銀行など)への制裁ならば、実質的な打撃につながると博士は指摘する。北朝鮮が中国から輸入する石油を制裁対象にするのも、即効性があるはずだという。

しかし問題は中国だ。中国は、北朝鮮政府の不安定化につながり、自国北の隣国を混乱状態に陥れるような対応をとりたくないのだ。

そりよりむしろ中国は、正直な仲介人の役割を担おうとしていると、博士は言う。北朝鮮を対話するよう、米国に促しているのだと。確かにドナルド・トランプ米大統領は選挙戦中、金正恩氏とハンバーガーでも食べながら話す用意はあると発言したかもしれない。しかし米・日・韓の3カ国はこれまでに、対話再開が実際の選択肢となるには、まずは北朝鮮側が本気で譲歩する姿勢を見せなくてはならないと、明確に意思表示してきた。

軍事オプションはあるのか

あるにはあるが、あまり良くない。北朝鮮に対する軍事行動は、軍事的にも民間人に対してもきわめて多大な被害をもたらすと、一般的に考えられている。

北朝鮮の核の備蓄を発見し排除するのは、困難だ。専門家たちは、地下深くに埋められているとみている。さらに北朝鮮は軍備を充実させており、ソウル(およびその先)をミサイルの射程圏内に収め、生物化学兵器を保有し、約100万人の兵を持つ。

北朝鮮に軍事行動をとった場合、「韓国に甚大な被害をもたらす報復攻撃のきっかけになる」リスクがあると、ニルソン=ライト博士は言う。

では暗殺は

韓国は数カ月前から公然と「斬首」戦略に言及している。金正恩氏と指導部のみを排除するための、標的を限定した攻撃のことだ。

あえて公言するのは、北朝鮮の挑発を抑止するため、あるいは交渉の場に引き出すための戦術かもしれないと、ニルソン=ライト博士は言う。ソウルでは、北朝鮮を交渉の場に再び引き出すには、ほかに選択の余地がないと相手が不安に思うところまで追い込むしかないという考えが支配的だ。

もしも「斬首」が実行された場合、その権力の空白を誰が埋めるのかという、大きな問題もある。金体制の存続は北朝鮮エリート層の利益にかなっており、対抗する政治勢力はない。

段階的な開放はないのか

北朝鮮を国際社会に取り込むには、段階的な国の開放を支援するのが得策だと考えられていた時期もある。そのためには、毛沢東没後の中国の経済改革をモデルにした、小規模な経済改革を続けていくことが有効だと思われていた。

正恩氏の父・金正日書記長は、中国の工業地帯への旅行を重ねていただけに、この方向性に興味を持っていた気配があった。経済改革を通じた開放を最も推進していたのは、正恩氏の叔父にあたる張成沢・前国防委員会副委員長だったと言われているが、正恩委員長は2013年12月に張氏を処刑。国家転覆をたくらむ反逆者だというのがその罪状だった。

正恩委員長はまだ中国を訪れていない。というよりも、まだどこにも外遊していない。そして経済成長に言及はするものの、軍事路線を優先させている様子だ。

実態の伴う反対勢力は登場するのか

非常にありえない。北朝鮮では一党独裁体制が絶対なのだ。住民は、外国の侵略から唯一自分たちを守ってくれる金王朝を崇拝するよう促される。

政府から独立したマスコミはない。すべてのテレビ、ラジオ、新聞は国営だ。さらに北朝鮮は独自のインターネットを作り出したため、住民は電子手段で外界とつながることもできない。

中国国境を経由してDVDなどがひそかに持ち込まれることもあり、限定的な情報の行き来は存在する。しかし全般的に北朝鮮政府は住民を厳しく統制している。政府批判の芽をつまみとるため、政府の情報提供者はあらゆるところに潜んでいるし、罰則はきわめて厳しい。反体制分子として捕まると(時には家族ぐるみで)強制収容所に送られかねず、収容所では大勢が死亡する。

では何が最善の手段なのか

圧力と対話の組み合わせが必要だと、ニルソン=ライト博士は言う。圧力とはたとえば制裁強化、米国務省テロ支援国家リストへの復活(2008年にいったん外されていた)のほか、中国と協力して実質的な痛みを伴う措置の実施――などの組み合わせだ。その一方で、対話開始のインセンティブとなるのは、米国による正式な国家承認と外交関係の樹立、あるいは韓国との平和条約締結だろう(南北朝鮮は法的にまだ戦争状態にある)。

この取り組みで何より重要なのは、米・中・韓・日の連携だ。しかし米国では新政権が発足したし、韓国政治は麻痺状態にある。歴史問題をめぐる日・韓・中の対立も続く。中国政府はさらに、米国が韓国で配備している地上配備型迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)」に激しく抗議している。北朝鮮としては、こういう各国の足並みの乱れを活用できるわけだ。

「北朝鮮が今、強く打って出ているのはそのせいだ。有効利用できる活路があると分かっているのだ」とニルソン=ライト博士は主張する。

(英語記事 North Korea: What can the outside world do?