平野和之(経済評論家)

 アベノミクスも今や実感なきまま4年が過ぎた。アベノミクスを「アホノミクス」という人もいるが、前向きに考えると、そもそも自民党から賃上げ、ベアという言葉がこれほど使われた政権も記憶にない人がほとんどではないか。安倍政権は賃上げによる内需活性化、デフレ脱却において、賃上げだけでなく、少子高齢化、労働力減少を解消することも踏まえての共働きによる世帯所得増加政策を推進している。

 日本の共働き世帯率の向上、共働きによる世帯所得を向上させようとする中で、特に労働規制改革の一つとして指摘されてきたのが103万円の壁と130万円の壁へのドリルだ。
※写真はイメージ
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 103万円の壁は、配偶者控除として、世帯で38万円の所得控除が受けられることになり、これが理由で女性はもっと働けるのに、就労機会を調整されているとの指摘が長くなされてきた。これを今回は150万円の壁に引き上げるというものである。

 もう一つの130万円の壁は、社会保険を夫の扶養に入れるかどうかの加入条件であり、これを超えると、社会保険の家庭の負担は増える。このため、これも就労機会を調整してしまうとのことで、10月から大企業のパートの25万人程度が対象だが、106万円の壁に下がる。今後中小企業にも拡大されていくかもしれないが、こちらは、夫と妻の扶養がセットのほうが負担が少ないととらえられがちになる。

 ならば、これで劇的に働き方改革が進むかと聞かれて、ピンと来る人も少ないだろう。計算が得意な人は、最終的には、たかが38万円分の所得控除や、妻の社会保険扶養外になることより労働時間を増やし、働いたほうがトータル所得は増えるわけだ。しかし、そうなっていない社会の実情を踏まえての103万円と130万円の壁に対してメスを入れる方法は下記のようにすべきと考える。

 ① 壁をそもそもすべて撤廃する。控除をなくせば、自然と働かざるをえなくなる。
 ② これまで以上に労働力投入、世帯収入の引き上げ、政府の歳入増加を考えるなら、逆に103万円以下に増税、負担増加、103万円以上に減税など、負の負担を与え、働きたくなる仕組みへ傾斜させる。
 ③ 一般的には①が有識者では提言されているが、②はさらに過激である。しかし、どちらも政策を実現すると、有権者の票を減らすリスクがあり、結果として、103万円の壁を150万円に引き上げる折衷案とする。