安倍宏行(Japan In-depth編集長)

新聞はどう報じたか


 毎年年末は税の問題はマスコミの定番ネタだ。税制改正の骨格が明らかになってくるからだが、今回は長年大きく変わってこなかった「配偶者控除」の問題にメスが入るのでは、との期待が大きかっただけに、注目が集まったのも無理からぬことだ。

 なぜ「配偶者控除」にそんなに注目が集まっているかといえば、アベノミクスの根幹にかかわっているからだ。第2次安倍政権発足後、安倍首相は一貫して「女性活躍」を旗頭に掲げている。「ウィメノミクス」という言葉(最近あまり聞かれないが)を覚えている人も多かろう。「女性が輝く社会へ」というスローガンは、実は女性から不評であったが、いずれにしても女性の潜在労働力は厳然として存在するわけであり、働きたい女性が働けない理由があるのなら、それが何であれ、取り払わねばならないのは社会の共通の認識であるように思われる。

 そうした中、「103万円の壁」など旧態依然の制度が残っているおかげで、パートなどで働く女性が、その壁を超える前に働く時間を自制するような制度は、女性活躍にはほど遠いのは誰が考えたって分かるだろう。

 「配偶者控除」そのものを廃止し、共働きにも適用される「夫婦控除」に移行させようとの意見も自民党内で出ていたにもかかわらず、結局政府の2017年度税制改正大綱では、「配偶者控除」が対象となる配偶者の給与収入の上限を103万円以下から150万円以下に引き上げる、というなんとも中途半端な結論に終わった。
与党税制協議会を終え、会見する自民党の宮沢洋一税調会長(右)と公明党の斉藤鉄夫税調会長=2016年12月8日、衆院第2議員会館(斎藤良雄撮影)
 年末から年始にかけての新聞は、もちろんこの問題を丹念に報じている。ざっと各紙の社説や記事を上げてみると:

朝日新聞「配偶者控除 働く「壁」を残す罪深さ」(2016年12月4日)
毎日新聞 配偶者控除維持 「働き方改革」に値しない(2016年12月5日)
日本経済新聞 働き方税制、かすむ理念 「夫婦控除」見送り パート主婦は減税(2016年12月9日)
日本経済新聞「女性活躍」はウソですか(2016年10月7日)

 このように、今回の改正に対し厳しい見方を一斉に伝えた。問題が複雑なだけに特集や解説を組んでいるところがほとんどだった。

産経新聞 よくわかる配偶者控除 103万円、106万円、130万円…妻の就労妨げる壁だらけ(2016年10月26日)

産経新聞 年収500万円なら“減税額”は? 配偶者控除見直しQ&A(2016年11月24日)

 他にも新聞ならではの具体的な試算などは読者に分かりやすい。また独自の視点の提供も新聞のお家芸だ。例えば、日本経済新聞は非正規にとってむしろ打撃だとの見方を紹介している。

日本経済新聞 配偶者控除「上げ」、非正規に打撃 永瀬伸子氏 お茶の水女子大学教授

 非正規雇用者が、安価な主婦労働者と競争を余儀なくされる、と警鐘を鳴らしている。こうした多様な意見を紙面に載せることが出来るのも新聞の強みだ。総じて、さまざまな深い解説記事を掲載しているという点で評価できる。

 一方で、新聞を定期購読する層が高齢者に偏り、20代から40代くらいまでの層はネット版を読むか、もしくはウェブメディアで見出しだけ追うことが多くなっている。これは一つの情報を深く知り、自分の頭で考えることの放棄につながりかねないと懸念する。