手続きの問題


 美学の問題は、それこそ「感性」の問題でしょうからこれ以上深入りはしません。現状での豊洲移転に問題がないとすれば、「問題」は手続きに帰着せざるを得ません。昨日までに提示された事実に基づけば、石原氏が知事に就任した時点での前提条件は下記になります。

・築地の防災リスクと不衛生に基づく近代化は長年の懸案であったこと
・現地での建て替え案が検討されたものの現実的でないと判断されたこと
・豊洲などの海岸近くの移転案以外は現実的に検討された形跡がないこと
・豊洲の地権者であった東京ガスは汚染の問題があることから売却に消極的だったこと

 その上で、知事に就任した石原氏の判断は、市場関係者や議会の議論は堂々巡りになってしまっており、自らが方向性を示さない限り問題が解決しないということ。その上で、最終判断に至る経緯として、下記の手順を踏んでいます。それは、豊洲案は、完璧ではないかもしれないが、現状の築地での現状維持よりはましであるという、現状でも成立する問題意識に根差しています。

・土壌汚染の問題について専門家の意見とともに、都の関係機関に検討させて「解決可能」という結論を得ていること
・土地購入の手続き及び価格が適正であるかについて都の関係機関に検討させて「妥当」との結論を得ていること

 以上の条件が満たされたことで、裁可したというわけです。焦点となっている瑕疵担保責任の免除について「知らなかった」、「報告を受けていない」ということについて、石原氏を責めることはありだと思います。これほど政治問題化していた案件について、知らなかったでは確かに恰好は悪い。しかし、恰好が悪いということと、なんらかの「不正」があったと前提することは違います。ましてや、そこで生じた「コスト」について、現在出揃っている証拠でもって石原氏個人に請求するというのは、暴論でしかないでしょう。
自らが主宰する政経塾「希望の塾」で講義、豊洲新市場の土壌汚染問題について聴講生らに語った東京都の小池百合子知事=1月14日、東京都豊島区(春名中撮影)
自らが主宰する政経塾「希望の塾」で講義、豊洲新市場の土壌汚染問題について聴講生らに語った東京都の小池百合子知事=1月14日、東京都豊島区(春名中撮影)
 兆円単位の予算を預かる知事です。部下には、明確な目的(豊洲の土地購入)を与え、そのための手段(瑕疵担保責任の免除)について細かく介入しないというスタイルはあり得ます。大組織で仕事をしたことがあれば、想像がつくのではないでしょうか。

 仮に、瑕疵担保責任の免除について石原氏が知事として知っていたとしても結論は同じだったと思います。民間企業である東京ガスの立場からすれば、法令上の安全対策をする義務はわかるが、「世間の空気」であるところの安心対策までを、青天井で引き受ける契約を結べるわけがないからです。豊洲以外に現実的な移転先の選択肢がなかったならば、その土地を確保する以外にはないわけだから、土地を入手して物事を前に進める上での必要な妥協だったということです。