川上和久(国際医療福祉大学教授)

 「小池百合子都知事は運がいい政治家だ」などと言ったらご本人は怒るに違いない。

 「政治家は、運を引き寄せるような迫力と実力、胆力の三拍子がそろってないとダメなのよ」

 今、小池知事の迫力と実力、胆力を周囲は驚嘆のまなざしで見ている。

 思えば、小沢一郎氏は、1993年、宮沢内閣の不信任決議案可決の立役者となり、羽田孜氏らと自民党を飛び出して「新生党」を結成、7月18日に投開票された第40回総選挙で、55議席を獲得し、衆議院第3党に躍り出た。

 このとき、小池氏は、「改革派」のもう一方の雄である日本新党で参議院から衆議院に鞍替え出馬、当選を果たしている。自民党は223議席と、過半数割れの屈辱を味わった。小池氏の目に、このときの小沢一郎氏は「運を引き寄せた迫力と実力・胆力の持ち主」と映ったのではないか。

 時は巡り、小池氏自身はいくつかの政党を経て自民党に移籍し、小泉純一郎首相の「郵政民営化選挙」を自民党の議員として経験する。
2005年8月20日、郵政解散で小池百合子環境相(右)とともに遊説する小泉純一郎首相=兵庫県伊丹市
2005年8月20日、郵政解散で小池百合子環境相(右)とともに遊説する小泉純一郎首相=兵庫県伊丹市
 郵政民営化は、当時はまだ全国特定郵便局長会が大きな力を持っており、自民党の集票マシンを破壊する行為でもあり、リスクだらけの政策だったが、小泉首相は前々からの持論を実現しようと、2005年に郵政民営化法を衆議院での可決にまでこぎつけるも、参議院で否決。すると小泉首相は、「郵政民営化の是非を問う国民投票」の位置づけで衆議院を解散、自民党は郵政民営化に反対した候補を公認せず、「刺客」を送り込むなどして「劇場型選挙」を展開し、296議席を得る大勝利を手にした。

 このとき、もともと兵庫6区が地盤だった小池氏は、郵政民営化に反対する小林興起候補の「刺客」として東京10区に鞍替え出馬し、小林氏を破って小選挙区で当選する殊勲をあげる。ここでは、「運を引き寄せた実力の持ち主」、小泉首相のケンカ戦法の迫力・胆力が乗り移ったかのような一番槍の働きぶりだった。

 小泉内閣で環境大臣、第1次安倍内閣で防衛大臣を歴任し、2008年には女性として初めて自民党総裁選に候補として名乗りを上げ、2010年には谷垣総裁のもとで女性初の総務会長を務めるなど、スポットライトを浴びたものの、安倍政権の下では、石破茂氏との近さが疎んじられたともいわれているが、ポストに恵まれない状態が続いていた。

 そんな小池氏にとって、舛添要一前知事の辞任は、可能性を開く千載一遇のチャンスだったろう。