内田都議は、都庁に人脈を張り巡らし、良く言えば都政の継続性に腐心し、悪く言えば、たとえどんな都知事が誕生しても、そのパワーで都知事を蹴散らしてきた。その「ドン」も、2月25日、ついに都議選への不出馬を表明。都議会自民党を「仮想敵」にしてきた小池知事にとって、内田都議の不出馬、都議会自民党との政策的な面での協調、ということになっては、都議選に向けて敵がいなくなってしまう。「向かうところ敵なし」は、裏を返せば劇場政治の終焉を意味する。

 そこで目を付けたのが石原慎太郎元知事だ。2012年5月に築地市場の業者らが都を相手取り東京地裁に提訴した住民訴訟。土壌汚染が確認されたのに、その汚染対策費用を適正に見込まない価格で、石原氏が東京ガスと豊洲市場用地の売買契約を結び都に損害を与えたとして、石原氏に土地取得額約578億円を請求するよう都に求めている。
自宅前で記者団の取材に応じた石原慎太郎元都知事=2月20日、東京都内
自宅前で記者団の取材に応じた石原慎太郎元都知事=2月20日、東京都内
 これまでは石原氏に賠償責任は存在しないとの立場を取ってきたが、1月20日、小池知事はこの対応方針を見直し、事実関係や責任の明確化は適正な都政運営に不可欠だと説明し、都の弁護人も入れ替えた。

 ここに至ると、過去の経緯をつまびらかにする必要性を感じないではないものの、都議選に向けて腰が引けた都議会の各会派が百条委員会設置に雪崩を打ち、「石原vs小池」の対立図式が、「都議会のドンvs小池」から見事に入れ替わって喧伝される構図を狙ったのではないかという見立てが自然だろう。

 この対立図式、どうなるのか? 石原氏は「週刊新潮」のインタビューに応じるなどして、石原氏が知事に就任した時に、既に豊洲移転が既定路線になっており、築地の現状を鑑みると、豊洲への移転が唯一の選択肢だったと主張している。

 その主張は、3月3日の会見でも繰り返された。自らの責任について、認め方が中途半端だったとの批判も多いが、練りこまれた想定問答で、「記憶違い」と言いながらも、小池知事と蜜月関係の前川練馬区長にメディアの焦点を当てさせたり、築地市場の汚染の問題にメディアの焦点が当たるなど、今度は議論をリードしていこうとする構えだ。

 売られたケンカを買った石原氏。3月20日に予定されている百条委員会でもこの主張は繰り返されるだろうし、行政の責任者としての政策判断に、損害賠償責任まで負わせようというのは、前例がないわけではないが、強引に過ぎないか、と眉をひそめる向きもある。