猪瀬直樹(作家・元東京都知事)

 築地市場の豊洲移転は汚染や土地取引の問題ばかりに焦点があたっているけど、もっと追及すべき重要な疑惑があるんです。それは自民党都連幹事長として絶大な権力をもち、一連の報道で「都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏に関することです。

 もちろん、汚染や土地取引の問題も解決しなければならない。でも今続いている都議会の百条委員会で取り上げるべきは、内田氏が絡んだと思われる豊洲の建屋建築工事の疑惑だと思いますよ。

 私が都知事だった2013年の11月に豊洲の建屋工事の1回目入札があった。そのときの予定価格が約600億円だったけど、入札は不調に終わったんです。そして私が辞任した3日後の12月27日に予定価格が約1000億円にはね上がった。

 その後、舛添要一知事就任翌日の14年2月12日に落札率99%超の価格で落札された。さらに、昨年の都知事選の最中である7月21日(小池知事当選は7月31日)には築地の解体工事が落札されている。こうしてみると、知事不在のときにいつも大事な決定が行われているんです。

「内田氏こそ百条委員会に呼ぶべき」(瀧誠四郎撮影)
「内田氏こそ百条委員会に呼ぶべき」(瀧誠四郎撮影)
 都議会の権力は連続しているわけで、それを一元的に支配していたのはまさに内田氏なんですよ。でもそれだけじゃありませんよ。

 内田氏は落選中の2009年に東光電気工事の監査役に就任し、都議に返り咲いた後、兼職しているんです。豊洲の建屋工事を受注した3つのJV(共同企業体)のうちのひとつに、東光電気工事が参加している。これは落札業者の役員と議員を兼業することを禁止する地方自治法第92条の2項に抵触する。

 ただ、これは要件が厳しく、判例では受注額がその法人の売り上げの主要部分を占める場合となっているので、その点については難しいかもしれない。とはいっても、それは議会で議論すべきだし、百条委員会でその問題を追及するべきですね。とにかく議題に乗せないことはおかしい。内田氏こそ百条委員会に呼ぶべきですよ。

 思い返せば2007年5月、都知事だった石原慎太郎さんから副知事になってくれと頭を下げられ、作家の大先輩の頼みであり、引き受けた。そのときの私はまだ都庁が「伏魔殿」と呼ばれる理由を知る由もなかった。

 副知事は事務方のトップで役人の最終ポストだったため、民間出身の私を受け入れることに都議会自民党は猛反発していた。内政に関わる権限を外すことで都議会の承認が得られた。私ができることは政府との折衝と「その他知事の特命事項に関すること」に限定され、手かせ足かせをはめられた状態でのスタートでしたね。