まず前者の点。「権威ある科学者が、豊洲は問題ないと言っている。それを信じず、移転しないことは不作為の責任がある」「生殺しになっている築地の水産業者は小池知事を相手に住民訴訟を起こしたらよい」。冒頭の切り出しは小池知事に一太刀を浴びせるものだった。このフレーズを何度も繰り返し、現職の「不作為の行政責任」を印象付けようとした。

 後者の点。「記憶にない」「自分は専門家ではない」「知見も能力もない」を繰り返し、石原犯人説を否定。ただ、「裁可した責任はある」と反省するが、しかしそのくだりで「行政や議会、みんなで決めた」「総意に従っただけ」「それに判を押しただけ」と加えることも忘れなかった。問題視された東ガスの瑕疵担保責任を免責した理由については会見の説明あいまいだったとして、3月7日、「東ガスは契約時までに法令に従って土壌汚染対策を実施済みだった。それ以上の安心のための対策は都が相当程度の費用負担をすることになったようだ」と文書で追加説明している。

 この会見を聞いた小池氏は、都庁内で記者団に「きちんと都政を責任ある姿でやっていくなら、あまり人に任せるのはよくなかたのでは」「他人の責任を問うのは簡単だが、なぜいま、こうまでしなければならなくなったか」「冷静に考えてみたら」と反論。いまの世論の空気、メディアの論調は「石原さんを質しても真相解明は難しそうだ」「13年半に及ぶ在任中の都政の無責任体制だ」と総括する(日経新聞3.4春秋)。世論が後押し追及する小池氏側が優位の様相だが、この決着は3月11日から20日まで断続的に行われる百条委員会での証人喚問の成否に掛っているとも言えそうだ。

 あいまいとされる政策形成の過程について事実を明らかにしてどこに問題があったか、土地購入費578億円に加え、858億円もの土壌汚染対策費を都民の税金から投入しなければならなくなった要因、その時、他方の東ガスはなぜ78億円しか汚染対策費を負担していないかを明らかにすることは勿論大事である。ただ、その事実で判明したことを実際の都政にどう生かすかがより大事だ。
東京都江東区の豊洲市場(2016年10月31日、ドローンで撮影)
東京都江東区の豊洲市場(2016年10月31日、ドローンで撮影)
 小池氏は「こうしたあいまい都政が今後ないよう、改革に役立てたい」と述べているが、加えるなら「今後の築地移転、豊洲をどうする」にどう役立てるかがそれ以上に大事ではないか。このさき移転延期に伴い、当面の操業補償費が100億円、施設の維持に年間数十億円ものカネがかかる。都議選の争点だといっても、都民が何を選べばよいか明示されずに、政治家の都合で「豊洲を政争の具に」にすることは絶対あってはならないことだ。

 間もなく3月議会が閉じ、4月になると都議選一色のような都政風景になろう。都議選が最大の山場、小池新党のゆくえはどうかと「政治の季節」に入りそうだが、生活者である都民にどんな利益があるのか、さっぱりわからない。

 政争に明け暮れがちな最近の都政だが、もう少し都政の全体像、枝ぶりをみるのも大事ではないか。石原氏が4年半前、3期13年半で途中辞任してから、猪瀬、舛添、そして小池とリリーフ都政のような形で事態が推移しているが、対象にする大都市東京、都民の内部構造には大きな変化が起き始めている。都政はあくまでも地方自治体として「都民の生活を守り、現在抱える不満や将来への不安を解消する」のが仕事だ。そこをはき違え、国政の先行指標だといって浮足立ち、目立つことばかりに目が行くような都政運営は間違っている。そうした都政は長続きしない。70年の都政の歴史がそれを証明している。