2017年03月21日 11:41 公開

米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は20日、下院情報委員会で証言し、ロシアによる米大統領選介入疑惑の捜査に関連して、ドナルド・トランプ米大統領の陣営とのつながりも調べていると初めて認めた。一方で、オバマ前政権が自分の電話を盗聴していたというトランプ氏の主張については、主張の裏付けとなる証拠は得ていないと証言した。

コーミー長官は公聴会でFBIの捜査について、トランプ陣営関係者とロシア政府とのつながりや連携の有無を調べると説明。さらに、犯罪行為の有無を判断すると証言した。

長官は、これは「とても複雑」な捜査だと述べ、捜査完了の期限は提示できないと表明。「事実をどこまでも追いかけていく」と強調した。

FBI長官の議会証言を受けてホワイトハウスは「何も変わらない」と述べ、「トランプ陣営とロシアが共謀していたという証拠は何もない」と繰り返した。

ショーン・スパイサー大統領報道官は、「何かないか探し続けることはできるが、存在しないものを探し続けるのは、どうでもいいことだ」と述べた。

ロシア政府は一貫して、米大統領選への介入疑惑を否定している。

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コーミーFBI長官はさらに、選挙終盤にトランプ・タワーの盗聴を当時のバラク・オバマ大統領が指示したと、トランプ大統領が今月初めに根拠を示さずツイッターに連投したことについて、裏付けとなる情報は何も得られていないと証言。慎重に情報を探したがそのような証拠は得られなかったし、司法省も何も把握していないと述べた。

国家安全保障局(NSA)のマイク・ロジャース長官も、同じ公聴会で証言。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がヒラリー・クリントン大統領候補に打撃を与える作戦を指示したという、今年1月の米情報機関合同報告の内容を、あらためて主張した。

ロジャース長官はさらに、NSAが英情報機関「政府通信本部(GCHQ)」にトランプ氏の監視・盗聴を依頼したとスパイサー報道官が会見で繰り返した内容について、これを重ねて否定。「主要同盟国を明らかに不快にさせている」発言だと述べた。

GCHQはホワイトハウスの主張について、すでに「まったく馬鹿げている。無視すべきだ」と報道官が一蹴している。

17日にホワイトハウスを訪れたアンゲラ・メルケル独首相とトランプ大統領との合同記者会見では、オバマ政権に盗聴された点で自分と首相は「少なくともそこは一緒だ」と冗談めかしてトランプ氏が発言し、メルケル首相が困惑し苦笑する表情を見せた。ロジャース長官はこれについても、同盟国との関係を「面倒なものにする」と述べた。

一方で、下院情報委のデイビッド・ヌーンズ委員長(共和党)は、トランプ氏と陣営関係者が他の方法で監視されていた可能性はまだあると述べた。


ロシアの介入疑惑の中身は

複数の米情報機関は今年1月、ロシア政府が支援するハッカーが民主党幹部のメールアカウントに侵入し、トランプ氏の勝利を助ける目的で、民主党やクリントン氏の評判を落とす内容を公表したと、合同報告書を公表した。

これについてコーミー長官は下院情報委に対して、「われわれにとってかなり容易な結論だった。プーチンはクリントン(元国務)長官を激しく嫌っていたので、その逆に、それほど憎んでいる相手の対立候補を応援するのは当然だった」と述べた。

しかしロシア政府は昨年夏の終わりごろ、当時の世論調査結果からトランプ氏の勝算はまったくないと判断し、クリントン氏を妨害する作戦に注力したのだとコーミー長官は説明した。

コーミー、ロジャース両長官は、今回の大統領選介入をロシアは異例なほど顕示していたと指摘。これは米国の民主主義をさらに傷つけるためかもしれないと、両長官は推測している。

コーミー氏はさらに、米国内に混乱と分裂と対立を作り出したという点で、ロシアは目的を達成したと述べた。

トランプ陣営からはすでに、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が就任前にロシア大使と会談していたことが発覚し、辞任した。民間人の立場で、対ロ制裁解除について大使と協議したとされている。ジェフ・セッションズ司法長官も、ロシア当局と接点はないと議会証言したものの、大統領選中にロシア大使と会っていたことが明らかになっている。

ロシア情報当局とトランプ陣営が共謀していたかどうかについて、オバマ政権下のジェイムズ・クラッパー前国家情報長官は、1月に退任するまでそのような共謀があったという証拠は目にしていないと話している。

<解説>アンソニー・ザーチャー BBC北米担当記者

ロシア政府は2016年米大統領選に介入したのか。この疑惑に関するFBI捜査について、コーミー長官が下院情報委公聴会で何を発言したかは重要だが、何については発言しなかったかも同じくらい重要だ。

親ロシア派のウクライナ政治家とつながりのあるポール・マナフォート氏(元トランプ選対本部長)については? ノーコメント。

民主党全国委員会のメールをハッキングした疑いの人物と、接触したとされているロジャー・ストーン氏(長年のトランプ氏側近)については? ノーコメント。

対ロ制裁解除についてロシア大使と就任前に協議したとされ、辞任に追い込まれたマイケル・フリン前国家安全保障問題担当補佐官については? ノーコメント。

「米国人に関するいかなる質問にも、答えたくありません」とコーミー長官は述べた。

これはつまり、FBIは捜査しているというだけでなく、FBIは具体的かつ幅広く捜査しているという意味だ。

民主党はこの展開を歓迎するだろう。しかし、共和党の議員たちは分かりやすく、ホワイトハウスと同じ論調だった。つまり疑惑の内容よりも、疑惑がニュース沙汰になるに至った政府内の情報漏洩の方が気がかりだというのだ。

トランプ氏が党内の支持を固めることができれば、この捜査の打撃から当分の間は身を守ることができるだろう。

(英語記事 Trump Russia claims: FBI's Comey confirms investigation of election 'interference'