高橋洋一(嘉悦大学教授)

 文科省の天下り問題がいまだに国会で議論されている。

 10年ほど前、筆者は第1次安倍晋三政権で官邸勤務の内閣参事官として、天下りを是正する国家公務員法改正の企画立案を担当した。そのポイントは、国家公務員の再就職について、退職前に利害関係のあるところへの求職活動を禁止したこと、役所の斡旋を禁止したことと、それを監視する再就職監視委員会の設立だ。

 一般に、いわゆる「天下り」は好ましくないというが、実は公務員の再就職全般を禁止することは憲法上許されない。そこで、再就職に際して、正当なものと不当なものを分ける必要がある。何がマズいかというと、退職前に利害関係先に求職活動したり、権限を持つ役所が斡旋するから再就職を受け入れざるを得なくなることだ。そうしたものを不当な再就職として規制する。

 逆にいえば、不当な自分の求職活動や役所の介入・斡旋がなければ、正当な再就職とする。こうすれば、再就職の弊害がかなりなくなるので、求職禁止と斡旋禁止条項を設けた。そして、それらの求職、斡旋活動を監視するために再就職監視委員会を設けた。

 それと同時に、一定の役職以上の国家公務員の再就職状況を公表するようにした。内閣官房のホームページ(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_j.html)に毎年公表されている。

 今回の早稲田大学の件でも、内閣官房のHPで毎年の再就職状況が個人名と再就職先を含めて公開されている(http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/kouhyou_h280920_siryou.pdf)。

 それをみると、氏名、退職時の年齢、退職時の官職、離職日、再就職日、再就職先の名称、再就職先の業務内容、再就職先における地位などが記されている。こうした資料を公開することによって、不当な再就職を牽制しようとしたのだが、今回は再就職監視委員会がよくやっており、マスコミは貢献していない。マスコミは天下り問題を報じても、こうしたネタの宝庫である原資料をまともに調べていないからだ。

 今回の文科省事件でも、文科省から提供されている資料ばかりを報じているところが多い。常日頃感じていることだが、どうして日本のマスコミは調査報道ができないのだろうか、不思議である。
合同庁舎に掲げられた文科省の看板=東京・霞が関
合同庁舎に掲げられた文科省の看板=東京・霞が関
 今回も人事課OBが介在して、その人物のみに焦点が当たっているが、これは役所からの情報リークにまんまとマスコミが乗っているからだ。実は、役人OBは今の制度では基本的に処罰されない。むしろ問題は実際に斡旋を行っていた現役の人事担当らにある。

 現役役人が主で、OBはその補助役でしかないことを再就職監視委員会もつかんでいるからこそ、現役役人の斡旋を違法と認定できた。はっきりいえば、現役役人が将来得られる報酬は、OBのノンキャリア職員の比ではないほど大きい。その意味で、文科省の報道で、人事課OBの「ノンキャリア」をことさら強調するのは、トカゲの尻尾切りでしかない。