山村明義(作家・ジャーナリスト)

 23日、注目の森友学園の籠池泰典理事長の国会証人喚問が行われる。

 今回、政府自民党側は森友学園をめぐる疑惑を払拭するため、厳密に調査した事実関係を洗いざらい相手にぶつける「肉を切らせて骨を絶つ」という戦術を採るとされる。一方、籠池氏側は、明らかな矛盾や虚偽の事実があっても、これまで言いたい放題発言を行ってきたこともあり、基本的にそのスタイルを変えることはないだろう。しかし、当日の証人喚問は、籠池氏が虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる可能性があり、そのスタイルは変えざるを得ない。

 そもそも、今回は森友学園の国有地払い下げをめぐって、土地評価額との約8億円の差額問題が発端になっていたはずだった。私の知る限り、一時期の共産党や民進党など野党は、明らかに「政府高官に政治家の関与を含めた金が渡っている贈収賄の疑獄事件」とみて疑惑を追及していた。その証拠として、民進党幹部の数人が「一大疑獄事件」と私自身に語っていたほどだった。

 昔から野党の国会追及を伴う新聞社の社会部記者や週刊誌記者などの追及キャンペーン記事は、「政府要人の”首取り”という手柄となる」と言われ、今回も安倍総理の「首取り」を狙う機会であったことは間違いない。

 しかし、いま野党側は「明日は真相解明の第一歩」(民進党の山井国対委員長)とトーンダウンした発言に変わった。新たな疑惑があれば、その材料を元に再び政府与党を追い込めるはずが、「事実の提示」という最も重要な行為に自信がないからであろう。
民進党の蓮舫代表(右手前)の質問に答弁する安倍晋三首相=2017年3月
民進党の蓮舫代表(右手前)の質問に答弁する安倍晋三首相=2017年3月
 実際にいつの間にか、安倍昭恵夫人(籠池氏本人は「安倍総理自身」と語っている)からの「100万円の寄付問題」に焦点がすり替わっている印象は否めない。もし証人喚問の「最大の真相究明の焦点」が、この100万円の授受の有無の問題だとすれば、これほど情けない疑惑追及劇はない。

 今回の証人喚問は、政府与党側から野党に持ちかけているのが実態で、現時点で政府側からの反撃は、その100万円の事実解明に焦点が絞られてきている。本質からずれた疑惑追及をかわすには、相手の最も知りたいことにスポットを当て、事実関係をきちんと答えることは極めて正攻法に近い。

 実際に、今回の参議院予算委員会が「真相追及の場」にならない可能性も出てきた、と私は考えている。疑惑追及には法律や社会的道義性に違反する重大なファクトが不可欠であり、仮に重大な新事実すら提示できず、野党もマスコミも、「これは真相解明の第一歩」「疑惑は残った」として追及を続ければ、彼らにとっては「役得」ではあっても、本来の義務を果たしているとは言えない。

 さらに、この100万円の寄付問題に対して、虚偽の事実があったとすれば、即座に籠池氏の元に逆にブーメランとして返ってくることになる可能性も高い。