有田芳生(参議院議員)

 安倍晋三氏と昭恵さんが結婚した直後のことだ。森永製菓の社長で父の松崎昭雄さんは、ある会合で知人の経営者に「あの娘は天衣無縫なところがあって」と不安を語っていたそうだ。私がそのエピソードをその経営者からたまたま聞いたのは、この原稿依頼があった日のことである。「天衣無縫」は精神の自由の発露であって、必ずしもマイナスではない。しかし政治的文脈に置かれると今回のような難題として一挙に襲いかかってくることがある。ご本人に計算された政治的配慮などないからこそやってきた危機的事態である。

米大統領との首脳会談のため米国に向け政府専用機で出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人=2月9日午後、羽田空港(古厩正樹撮影)
米大統領との首脳会談のため米国に向け政府専用機で出発する安倍晋三首相(左)と昭恵夫人=2月9日午後、羽田空港(古厩正樹撮影)
 私が昭恵さんの人柄を聞いたのは、音楽評論家の湯川れい子さんからだった。たしか第一次安倍政権のころだった。女性たちの会合に昭恵さんもかかわっていて「とてもいい人よ」という言葉を聞いた覚えがある。直接にお目にかかったのは国会の議院会館の会議室だ。東日本大震災関連の会合で、私は上梓したばかりの『ヘイトスピーチとたたかう!』(岩波書店)をお渡しした。まだヘイトスピーチ解消法が成立するきざしもないころのことで、昭恵さんがヘイトスピーチの攻撃対象である韓国の文化に関心を持っていることを知っていたので、きっと理解していただけるだろうと思っていた。 

 安倍昭恵さんについて私が語れることといえば、知人の記者がご本人から聞いたという「家庭内事情」ぐらいのことだ。首相が午後9時ぐらいに帰宅しても、昭恵さんは午後11時ぐらいに帰ってくることがしばしばあったという。「家庭ではほとんど会話がない」「主人の食事は母(注、首相の母の洋子さん)が作っている」といったことも、ご本人が語ったというのだが、真偽は不明である。ただしもう一つ、報道されていない事実がある。それは、昭恵さんの人物像を知る上で興味深いテーマである。週刊誌のタイトル風に書けば「拉致問題解決に総理夫人を派遣か」といったところだろう。