消費税増税延期と解散を巡る議論が進んでいる。そして、この議論には5つの大きな矛盾が存在する。物事はそれを分解し、論点を丁寧に整理することでこの矛盾と本質が見えてくる。今回の矛盾は政権交代による逆転現象が生み出したものであり、非常に興味深いものでもある。


1.消費税増税法案の矛盾

 民主党政権下で三党合意により生み出された消費税増税法案。この法律は大きな矛盾を抱えている。この法律には附則18条(景気弾力条項)が含まれており、その時の政権の判断によりその施行を延期又は廃止できるとしている。しかし、自動的にその実施期日が変更になったり、法律が廃止される条項が含まれていない。つまり、政権の判断で延期や廃止ができるが、法律そのものは生き残ってしまうのだ。これを廃止するには新たな法律が必要となる。


2.廃止法案の矛盾

 自民党は総理による消費税増税延期判断があった場合、国民の信を問う総選挙を行うとしているわけだが、これは先程の法律の矛盾があるためである。総理の判断により実質的に延期や廃止ができるが、法改正を必要とするので、この法改正が選挙の争点になるからである。与党自民党は「増税延期又は廃止法案」を争点に掲げるとしており、反面、野党第一党の民主党とその支持母体の連合は「予定通り実施すべき」としていた。これを単純に整理すると与党自民党「消費税増税延期」、野党民主党「消費税増税賛成」となるわけで、野党が票を失う要因となる増税を謳うというありえない状況となるわけだ。この矛盾に気がついたのが、11月14日になって突如消費税増税延期を容認し、意見を翻した。


3.内閣不信任の矛盾

 消費税増税延期を国民に問うという解散について、野党などは「解散に大義がない」として、内閣不信任を提出するとしているが、もし、不信任が決議された場合、「解散」又は「内閣総辞職」になるのだが、与党自民党が解散を容認しているため、安倍総理が「内閣総辞職」を選択する可能性はなく、「解散」を選択すると思われる。つまり、内閣不信任案の提出が「解散」を促進するものになってしまうのである。


4.アベノミクス批判の矛盾

 アベノミクスとは 1.量的緩和 2.財政出動 3.成長戦略 という3つの柱をベースに、デフレ脱却に向けて適宜必要な政策を組み合わせてゆくというものである。当然であるが、この経済政策に消費税増税は含まれていない。そして、現在の経済の失速の原因は「消費税増税」によるものであることは間違いなく、昨年の消費税増税判断の間違いを批判する事はできても、アベノミクスを批判するのは間違いである。また、消費税増税の間違いを正すのが今回の判断であり、争点なのである。


5.消費税増税推進の矛盾

 アベノミクスと消費税増税が直接的関係がないことは先述したが、景気悪化を批判しながら、消費税増税推進を進めるのは矛盾している。消費税は消費に税金をかけるという構造上、消費が大きく減退するリスクが高い。そして、現在の指標の悪化はこの消費税増税に因るものである。原因と結果がわかっているからこそ、総理は消費税増税延期を決定するとかんがえられるわけであり、さらなる増税は景気悪化に拍車をかけるものになる。だから、景気悪化を批判し増税を行うべきだとするのは根本的に間違っているといえるのである。

 最後に、論理的矛盾が生じているものはいつか破綻する。物事には原因があって過程があり結果がある。結果や印象を見ているだけではなかなかわからないものが綺麗に論理整理することで見えてくると私は信じている。