また、肩や腰のねじりは下半身の力を上半身に伝える役目と体幹自体の大きな力を生み出す役割がある。このねじる力がスイングスピードに貢献することが分かっている。こうしたねじりを活かしたスイングの変化は下半身や体幹の筋力増加、体重の増加が影響している。

 イチローのような細身の選手は体重が少ない分、下半身の回旋と上半身の回旋をほぼ同時に行い、一気に全身の力を伝える方法を取っているのに対し、約100キロの体重がある大谷は、下半身が安定しているため体幹のねじりから回旋を中心としたスイングができ、打つための大きなエネルギーを生み出すことができる。

オリックス戦で、6回に右適時打を放つ日本ハム・大谷翔平=2016年9月、京セラドーム大阪
オリックス戦で、6回に右適時打を放つ日本ハム・大谷翔平=2016年9月、京セラドーム大阪
 筆者が現在、大谷の打撃で似ていると感じているのが90年代にメジャーで5ツールプレーヤーとして活躍した「ケン・グリフィーJr.」である。実は彼の打撃練習を一度見たことがあるが、力感のないフォームなのにいとも簡単にホームランを飛ばし、さらに右、中、左と打ち分けることができる打撃を見て、唖然(あぜん)とした覚えがある。大谷との共通点は後ろの肘のたたみ方であり、あの柔らかく、しかも素早くたためる打撃フォームは非常にしなやかで美しく見える。

 ケン・グリフィーJr.と比較して、打者大谷に課題があるとすれば、インコースを打つときに体が若干一塁側へ流れる点である。このため、引っ張るべき球種やコースにおいて「パワーロス」がみられる。これは前の腕(右腕)のたたみ方が不十分なために、体を一塁側へ倒すことでボールとの距離を取ろうとしていることが原因であろう。大柄で手足の長い打者では誰もが苦しむ点であるが、大谷であれば時間が解決してくれるであろう。

 最後に今後の大谷に関して、日本、アメリカどちらで活躍するにしろ「二刀流」はどちらかの決断が迫られるであろう。その中で筆者なりに二刀流を継続する方法を探ると、クライマックス・シリーズで見られたようなDHの打者としてコンスタントに出場し、最後の1イニングの場面でDHを外して、クローザーとして投げることができれば、今後も継続可能なのではないだろうか。

 もちろん、毎試合投げるとはいかないだろうが、登板間隔をある程度空けることができれば、長く活躍することができるのではないだろうか。1イニングの全力投球だから、コンディションが整えば、夢の170キロも期待できるし、打者としても度肝を抜く打球を放つ大谷を多く見ることができるのも魅力となるであろう。

 いずれにしろ、今まで見たことがないプレーが期待できる選手である。今後も野球界をけん引する存在として期待しているが、彼がどう考えて「選択」するのか静かに見守っていきたいし、その選択を是非とも応援していきたい。