田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 黒田東彦総裁を中心とする現在の日本銀行の体制が確立して4年が経過した。黒田総裁、岩田規久男、中曽宏両副総裁の任期は残り1年ほどになる。現在の日銀の政策は、アベノミクスの核として機動している。その政策の主要要素は、20年ほど続くデフレ経済を脱却し、2%のインフレ目標を達成することで、日本経済を安定的な成長経路に戻すことである。
安倍首相との会見を終え、記者の質問に応じる日本銀行の黒田東彦総裁(中央)=1月11日、首相官邸(ロイター)
安倍首相との会見を終え、記者の質問に応じる日本銀行の黒田東彦総裁(中央)=1月11日、首相官邸(ロイター)
 経済の安定はまた一人当たりの生活水準の増加、雇用の最大化を伴うことが意図されているのは言うまでもない。デフレ脱却によるインフレ目標の到達は、その意味では私たちの生活や働く場の安定的な改善という最終目標からみれば、中間目標である。

 さて、残り1年を切った黒田日銀について、今回は簡単にその成果と問題点を指摘しておきたい。これは言い換えるとほとんどアベノミクスの成果を現時点で点検することに等しい。ただし以下では少数のポイントだけに絞る。

 まずインフレ目標自体については、昨年までのマイナス域からは脱却しているが、デフレ経済を脱したとはおよそいえない状況である。消費者物価指数の総合でみれば、対前年同月比で0.2%である。消費者物価指数は上方バイアス(インフレ方向に強くでる歪み)があることや、再びデフレに陥らないようなのりしろ部分を考慮に入れれば、インフレ目標達成についてはもちろん不合格である。ここ数か月は改善傾向にあり、また予想インフレ率の指標をみると若干の改善をみせてはいる。ただし、黒田総裁の任期は来年の3月までなので、2%のインフレ目標の到達は難しいだろう。

 この理由については、本連載でも何度も書いてきているが、ふたつの要因が考えられる。ひとつは2014年4月の消費増税による消費の急低下とその後の悪化持続である。もうひとつは国際的要因で、これは中国経済の減速、イギリスのEU離脱、そして米国の大統領選などに伴う経済政策の不透明感などである。

 後者の国際的要因は、日本の政策ではどうしようもできない。だが前者は対応が可能であった。実際にその後予定されていた消費税のさらなる引き上げは2回にわたって先送りされた。しかし消費マインドは、14年4月以降回復していない。直近で若干の改善傾向が見られ始めただけだ。

 ここで注意すべきは、日銀の大胆な金融緩和政策自体の効果を否定してはいないことだ。むしろ反対に、日銀の大胆な金融政策は目覚ましい効果をあげている。ただそれを打ち消す逆向きの効果があるということだ。前者の改善効果を後者の悪化効果が完全に上回っていないことも注意を要するポイントである。つまり、過度な悲観は禁物ということだ。