長谷川幸洋(ジャーナリスト、東京新聞論説委員)

 東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の「ニュース女子」騒動とは何だったのか。番組を制作するDHCシアター(現DHCテレビジョン)が沖縄問題を再検証した続編をネットで公開して以来、騒ぎは沈静化した格好だ。だが、今回の騒動はマスコミとジャーナリズムについて深刻な問題を提起している。

 それは事実確認よりも政治的スタンスを優先する左派ジャーナリズム、言論の自由をめぐる組織と個人の対立、さらにはネットと既存マスコミの乖離(かいり)といった問題である。ここでは、それらを深掘りしてみる。

 ニュース女子問題自体はすでにあちこちで報じられ、私自身も「現代ビジネス」の連載コラム(《1》《2》)のほか「月刊Hanada」5月号にも長文の総括記事を寄稿したので、ここでは簡単にする。

 問題になった1月2日放送の沖縄特集は沖縄・高江のヘリパッド反対運動を取り上げた。市民団体が5万円を支給して「特派員」を募集していた件や反対派が高齢者の動員を呼びかけ、一部は日当を受け取っていた可能性を伝えた。地元住民は「反対派が救急車の通行も妨害した」と証言した。これらが反対派の逆鱗に触れた。
沖縄県東村高江の米軍高江ヘリパッド建設に抗議する反対派とにらみ合う機動隊員ら。反対派による通行妨害や機動隊員に対する挑発行為も目立った=2016年12月21日
沖縄県東村高江の米軍高江ヘリパッド建設に抗議する反対派とにらみ合う機動隊員ら。反対派による通行妨害や機動隊員に対する挑発行為も目立った=2016年12月21日
 なかでも、反対派が格好の攻撃材料にしたのは「救急車妨害問題」である。たとえば、朝日新聞は地元消防本部が「そのような事実はない」と答えた、と報じた(1月18日付)。消防の否定発言などを根拠に毎日新聞や東京新聞なども「番組はデマ」と批判した。

 ところが、あらためて番組スタッフが消防に取材すると、妨害はやはり本当だった。現地の消防署長は最初「妨害はなかった」と言いながら、質問を続けると「抗議活動側から邪魔されてるって見方も…なきにしもあらずですね」と認めたのだ。

 反対派はヘリパッド建設現場につながる道路に多数の車を縱横に停車させて、一般車両が通行できないように妨害していた。だから、救急車も現場に急行できなかった。署長が「邪魔されてる」と言ったのは、そういう状況である。

 なぜ、実態が間違って伝わったのか。検証番組はその点も消防署長に確かめた。