以前、セックスレスの既婚女性たちに話を聞いて書籍としてまとめたことがある。当初は、セックスレスになっている夫をなんとかその気にさせようとしたが結局ダメで、最終的には「我慢し続けている」女性が多いのではないかと予想したのだが、実際に取材を重ねてみると、女性たちは「我慢し続けたりはしない」という意外な傾向が顕著だったのである。

 そのうちの一人、ケイコさん(45歳)のケースをみてみよう。彼女は結婚して18年、下の子が生まれてから13年ほどセックスレスだ。

 「子どもが小さいうちは手がかかってセックスしたいなんて思わなかったけど、40歳を過ぎてパートでもう一度働き始めて、なんとなく気持ちが変わっていったんです」

 ママ友以外の女性たちとの会話も増え、夫以外の社会で働く男性たちとも接するようになった。なにより自分自身に目が向いた。

 「ヘンな言い方ですが、『女』としての自分がもう一度芽生えたというか…」

 そんなとき職場の同僚である男性と急接近した。男女が同じ空間にいるところでは恋愛感情は生まれてしまうものである。久しぶりに男性を好きになる気持ちがわき起こり、自分では止めようがなかったという。

 「その時点では10年ほどセックスレスでしたから、いざセックスとなったときは怖かった。彼にそう言ったら、すごく優しくしてくれて…。挿入された瞬間、『ああ、私、まだ女として大丈夫だったんだ』とうれしくて泣けてきました。セックスレスであることを大したことじゃないと自分に言い聞かせてきたのかもしれない。実はしたかったんだと、そのとき初めて思ったんです」

 ケイコさんのような女性は案外多い。セックスレスによって自分の気持ちが満たされていないことに、セックスをしてみて初めて気づくのだ。本当は「したい」と思っていたことに。つまり、女性たちは自分の性欲を認識していないことが少なくないのだろう。