これはトランプ氏にとっては朗報である。もし、トランプ氏が「2期目」を諦めるつもりならば、2010年のオバマ氏と同じ判断も可能だ。すなわち「空母艦隊は派遣してみせるが、北朝鮮空爆は命令しない」という結論である。

 だが、もしトランプ氏が2期目も狙うのならば、そして歴史に汚名を残したくなければ、今のうちに「禍根」は断っておかねばならない。8年間も傍観すれば、地下発射施設が複数整備されてしまう恐れがあると、誰でも考えられるだろう。その間には、イランやその他の危ない国も、核武装に近づくかもしれない。ボヤボヤしている暇などないはずである。

 では、具体的にはどんな方法があるだろうか。まず、ホワイトハウスの立場になって考えてみると、「空母からの空襲」はできるだけ避けたいオプションである。なぜなら、海面のロケーションがあまりにも悪すぎるからである。

 黄海から作戦を決行すれば、中共領の大連海軍工廠や旅順軍港の目と鼻の先に米機動艦隊があちこちに航行することになる。中共は、漁船団の「海上民兵」を含めたあらゆる手段でそれに対して各種の妨害を加えるにきまっているだろう。さもないと中共中央が中共軍から激しく詰め寄られてしまうからだ。

 ホワイトハウスは、攻撃が開始される前から中共との予期せぬトラブルに対応せねばならなくなる。そこから先の「詰め将棋の手」を考えるどころではなくなってしまうだろう。

 日本海側から作戦する場合も、同じだ。そこはウラジオストック軍港から指呼の間である。おちぶれたりとはいえどもロシア海軍が、黙って傍観するわけがあろうか。黒海やバルト海で最近繰り返しているNATO艦艇へのイヤガラセを何倍にも強化したような、空・海からの妨害行動に出てくるであろう。

 だからトランプ政権としては、対北朝鮮作戦に空母を使う気なんて最初から全くないだろうとわたしは考えている。対北鮮の有事において米空母艦隊に何か役目があるとすれば、それは真の攻撃軸から敵の目を逸らしておくための「囮(おとり)」、すなわち「陽動/陽攻」用としてだけだろう。しからば、派手な煙幕ではない主力の攻撃手段とは何なのか?

巡航ミサイルが重宝される理由


 中共やロシアからいっさい邪魔をされずに、北朝鮮の核施設とICBM発射台を奇襲的に破壊してしまえる手段としては、まず「潜水艦から発射する巡航ミサイル」に指を屈するのが穏当だ。ステルス爆撃機の「B-2」や、ステルス戦闘機「F-22」に空爆させるというオプションは、万が一にもその有人機が墜落したり、乗員が北朝鮮の捕虜になるというリスクが、政権1年目のトランプ氏としては、ほとんど受け入れ難いため、空母からの有人機による爆撃と同様に、選ばれることはないであろうとわたしは考える。

 ところで、既往の戦例にかんがみれば、巡航ミサイルでは、敵の要人を爆殺することはまずできない。だからこれまで、アフリカや中東では、「巡航ミサイルは決着性にとぼしい兵器だ」と思われてきた。問題をなにも解決しないで、ただ、米政権が自己宣伝して自己満足するだけの道具なのだ――と。

 実際、直近のシリアでも、シリア政府軍の航空機とその掩体壕等は正確に59発のトマホークで破壊されたけれども、基地機能そのものはじきに復活した模様である。あきらかに、巡航ミサイルだけでは、戦争は決着してはくれない。
米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター)
米軍の巡航ミサイル「トマホーク」(ロイター)
 しかし、トランプ政権がひとたび巡航ミサイルによる北鮮攻撃に踏み切れば、おそらく「金正恩体制は崩壊する」と、わたしは予言することができる。すなわち、こと、相手が北朝鮮である場合に関してのみ、米国の「巡航ミサイル主義」は、とても正しい。それがいずれ立証されるであろうと思う。

 その理由を説明しよう。対地攻撃用の非核弾頭の巡航ミサイル「トマホーク」は、北朝鮮の核関連施設とICBM射場施設を、ほぼ2日のうちにすべて機能停止させるであろう。(第一波の攻撃終了後、日の出後の偵察衛星写真によって破壊状況を判定して、念を入れて第二波攻撃を加える必要がある。よって1日では片付かぬ)

 しかし、それがうまくいっても、北朝鮮軍が機能停止するわけではまったくない。その結果、どうなるか。米軍と北朝鮮軍は、緩慢な戦闘を再開することになる。(朝鮮戦争は法的にはまだ終わっていない休戦状態であるので、あくまで「開戦」ではなく「戦闘再開」だ)

 といっても、血みどろなものではない。北朝鮮の砲弾は米軍基地には届かないし、米兵も1人も死なない。彼我の実力差をよく知る北朝鮮指導部は、韓国内の米軍基地を地対地ミサイルで攻撃することも自粛するはずである。首都平壌が空爆されない限りは……。