金日成は1970年代、工作員を集めて「祖国統一問題は米国との戦いである。米国は2度の世界戦争に参戦しながら、1発も本土攻撃を受けていない。もし、われわれが1発でも撃ち込めば、彼らは慌てふためいて手を挙げるに決まっている」と教示している。国民の被害に弱い民主国家の弱点を突こうという一種のテロ戦略だ。

首脳会談に向かう「エアフォースワン」の機内で、中国への不満をぶちまけたトランプ氏=4月6日
首脳会談に向かう「エアフォースワン」の機内で、中国への不満をぶちまけたトランプ氏=4月6日(ロイター)
 トランプ政権は韓国とその周辺海域で大規模な軍事演習を行ない、空母艦隊を北朝鮮近海に送るなど、いまのところ「取引」ではなく、圧力をかけることを選択している。先制攻撃、特に特殊部隊による金正恩暗殺作戦を実行するのではないかと、ここ数日、日本のマスコミを賑わしている。しかし、すぐに軍事攻撃はしないだろう。中国に対して制裁の徹底的強化を求めるという非軍事的手段がまだ残っているからだ。

 核ミサイル関連部品、素材を中国が国連制裁を破って秘密に提供しているという情報が多くある。米国の情報機関はそのことについて具体的に調べてきた。それを止めさせることと、核ミサイル開発と金正恩の政権維持に欠かせない外貨を止めることが当面の目標だ。

 北朝鮮は金正日時代に労働党39号室を作って、政府が主導する社会主義計画経済の外に金正日が自由に使える「統治資金」を管理した。80年代から90年代にかけて朝鮮総連が送った多額の外貨がその資金源となった。武器や麻薬販売資金、人民から毎年上納させる「忠誠の証し資金」(国内の住民には砂金などで上納させ、海外勤務者には外貨を求める)などで集められた外貨をスイスなどの銀行の隠し口座で管理していた。ブッシュ政権がそのことに気づき、金融制裁をかけたので、彼らは口座の多くを中国に移したといわれている。

 今回、トランプ政権は中国の外為専門銀行である中国銀行など10以上の金融機関に対して米国と取引を出来なくする制裁を準備していると聞く。それが発動されれば、中国銀行は外為業務が出来なくなり、事実上、倒産するとさえ言われている劇薬だ。その劇薬をちらつかせながら、トランプは習近平に圧力をかけている。まずはその結果をみることが、トランプ政権の当面の考えだろう。