田村重信(自民党政務調査会審議役) 

 北朝鮮の金正恩委員長は、核兵器とミサイル開発を進めて抑止力を向上、通常兵器を削減し、その余力で経済建設を行うという「併進路線」を推進している。

 昨年の2度の核実験および23発の弾道ミサイル発射に加え、3月6日には石川県能登半島沖のわが国の排他的経済水域内に3発を着弾させ、「在日米軍攻撃担当部隊が参加」と発表するなど、北朝鮮の挑発行為はわが国が到底看過できないレベルに達している。

 さらに、固定式発射台から発射する長距離弾道ミサイルに加え、移動式発射台(発射台付き車両=TEL)および固体燃料を用いた弾道ミサイル、高軌道に打ち上げ高速で落下するロフテッド軌道による発射など、新たな中・長距離弾道ミサイルも開発中で、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)についても開発を進めている。

 このように北朝鮮は、わが国及び同盟国にとって探知や迎撃が通常より困難となる技術を獲得しつつあると考えられ、北朝鮮の脅威が新たな段階の脅威に突入したとみなければならない。

北朝鮮の軍事パレードに登場した、新型中距離弾道ミサイル「北極星2」の発射管付き車両=4月15日、平壌(共同)
北朝鮮の軍事パレードに登場した、新型中距離弾道ミサイル「北極星2」の発射管付き車両=4月15日、平壌(共同)
 こうした北朝鮮による度重なる核実験及びミサイル発射は深刻な脅威であり、もはや、わが国の弾道ミサイル防衛の強化に一刻の猶予もなく、北朝鮮による核・弾道ミサイル開発への対応は喫緊の課題である。政府においても防衛省を中心に弾道ミサイル防衛(BMD)の強化のための施策が進められているが、それでも北朝鮮による挑発は止まらない。

 そこで自民党が北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部や、安全保障調査会、国防部会の場において積極的に議論したところ、北朝鮮が新たな段階の脅威であることが明確になった。

 そこで今般、党安全保障調査会の下に「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」(座長・小野寺五典元防衛大臣)を急遽発足させ、これまでとは異なる北朝鮮の新たな段階の脅威に対して有効に対処すべく、あらゆる実効性の高い方策を直ちに検討し、「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を取りまとめ、予算措置を含め、政府に対しその実現を求めることとした。

 この提言は3月29日に発表され、党の政調審議会の了承を経て、翌日、今津寛党安全保障調査会長、小野寺座長らによって総理官邸で安倍総理に報告された。

 提言の内容は、(1)「弾道ミサイル防衛能力強化のための新規アセットの導入」(2)わが国独自の敵基地反撃能力の保有(3)排他的経済水域に飛来する弾道ミサイルへの対処―の三点で、政府において実現に向けた検討を迅速に開始し、さらなる抑止力の向上により、北朝鮮にこれ以上の暴挙を断念させるとともに、国民保護体制の充実を含めたより一層の対処力の強化により、万が一の際に国民の生命、わが国の領土・領海・領空を守り抜く万全の備えを構築することを求めるものである。