今回の総選挙が、政党間での政権交代はもちろん、与党内での首班交代につながると思う方はまずいないだろう。その意味でこの選挙は、政治・選挙システムは大きく異なるものの、大統領の地位には影響を及ぼさない米国の中間選挙と似た性格を帯びたものになりそうだ。
 
 折から、米国では11月4日に中間選挙の投票が行われたばかりだが、「近年まれに見る争点がない選挙」(ワシントン・ポスト紙)との声が高く、盛り上がりに大きく欠けた。。下院に続いて上院でも共和党が多数を獲得したことで、「政権と議会の緊張関係が一段と高まる」などとも報じられているが、議席数をみれば、米国政治の潮流を変えるようなインパクトは少ない。特に内政面では、オバマ大統領の残り任期2年間は、重要問題では政権と議会がお互いに譲らず、手詰まり状態が続く可能性が高くなっている。

 時期的に近接して行われることになった日米両国での選挙を取り巻く類似点、相違点はどのようなものだろうか。


■ 「経済」に最も高い関心も、両党とも具体的な政策不在


 ギャラップ社が中間選挙の投票約1ヶ月前の9月末に実施した世論調査では、有権者が「極めて重要」「とても重要」と考えた政策課題の上位は、
1・経済(88%)
2・雇用(86%)
3・連邦政府が正常に機能すること(81%)
4・イラク、シリアでの「イスラム国」の動き(78%)
5・男女間での賃金平等(75%)
6・財政赤字(73%)
の順だった。

 このうち「連邦政府の機能」は、昨年10月には議会の上下両院対立によって歳出法案が成立せず、約半月にわたって連邦政府が業務を停止したことなど、米国独特の事情を背景にしているもので、「イスラム国」は米国が歴史的にも、21世紀に入ってからのイラク介入などによっても中東情勢に強い関心を抱いていることによる。

 その他の4項目は日本でもほぼそのまま、今回の総選挙で意識されている課題となっている。いずれも、広い意味での経済問題に属しており、少なくとも先進国間では「政治は経済によって動く」ことを証明している。
 
 ギャラップの調査では、各課題について「(民主・共和)どちらの党がより良い結果を出せると思うか」を質問。6課題のうち、民主党を評価する意見が多かったのは「男女間での賃金平等」のみで、「雇用」はほぼ同率だったが、他の4項目では過半数が共和党を高く評価した。実際の選挙結果を見ても、オバマ政権に対する失望感と合わせ、有権者のこのような受け止め方が議席の増減に直結したといえる。

■中間選挙は72年ぶりの低投票率


 とはいえ、今回の中間選挙は、「記憶にある限り、一番退屈で新味がない選挙戦だった」(コラムニストのデビッド・ブルックス氏)。全国平均投票率は36.4%と、第二次大戦中の1942年以来実に72年ぶりという低さを記録し、選挙民の関心の低さを如実に示す結果になった。

 この最大の原因が、国民を二分するような明確な争点が最後まで現れなかったことだ。

 前回2010年の中間選挙では、医療保険制度改革(オバマケア)の是非や、不法移民規制などが重大な争点となった結果、共和党が圧勝し下院で4年ぶりに多数派に。08年選挙で大統領ポストをはじめ上下両院でも多数を占めた民主党の勢いが完全に止まり、米国政治が大きな転機を迎えることになった。

 これに対して、最も関心が高い経済問題についても目新しい公約は両党からあまり聞かれることないままで終始。米国の景気自体は、日本や欧州に比べると上向き傾向を示しているだけに、リーマンショック当時などと比べれば切実さは少なかったこともあり、結局は政党レベルで広がりを見せた政策・公約は見当たらなかった。

 投票の結果、共和党が上院で多数派となり、下院でも議席差を拡大したが、大統領の拒否権を覆せる3分の2に遠く及ばないのはもちろん、上院で重要法案の討論を終わらせて投票を強制させるのに必要な60票もはるか彼方。これから2016年大統領選までは、ブッシュ前政権の最後の2年間と同じように、両党とも主要な政策課題は動かしにくい状況が続くとの見方が圧倒的だ。
米国での投票風景

■日本も「信任投票」か


 一方、日本の現状を見ると、同様に明確な争点を欠いている感は強い。景気の先行きに以前よりも不安感が強まっている中で不思議な現象ではあるが、解散の最大の理由である消費増税を、当初の予定通り「来年実施すべき」という政党が存在していないのだから当然ともいえる。

 さらに、現在の日本は近年で最も野党の勢力が弱い時期に入っており、選挙民の関心をひきつけるような政党がなかなか見当たらない。となれば今回の総選挙が安倍政権、ないしはアベノミクスに対する信任投票の色を帯びることは避けがたく、米中間選挙以上に、現政権に対する評価が示される場となりそうだ。

 オバマ大統領の場合、任期6年目の現在での支持率が概ね40%台で、昨年夏ごろからは常に不支持が支持を上回る状態になっており、同時期に支持率が3割台にまで落ちたブッシュ前大統領には勝っているとはいえ、歴代大統領の中でも「レイムダック化」は激しい(クリントン元大統領は、6年目で60%以上の支持を得ていた)。

 これに対し、各種世論調査での安倍内閣への支持率は解散前で概ね40%台後半と、オバマ大統領のそれと大きくは変わらないが、不支持率が支持率を上回る状況は出ていない。となれば、やはり今回は米中間選挙以上に、自民の議席がどのように変動するかが、唯一の焦点にならざるを得ないのかもしれない。 (iRONNA編集部)