一方、有料会員の場合にはどちらも無料になるので、利用者側はあまり意識せずにこれらのサービスを利用している可能性がある。だが利用者の意思で両者を自由に選択することはできない仕組みとなっており、物流センターの状況や商品の在庫状況によって当日配送かそうでないかは変わってしまう。つまり、当日配送にするかどうかの選択肢はもともとアマゾン側にある。

 当日配送かどうかをあまり意識せずにお急ぎ便を使っていた有料会員にとっては、当日配送できる商品の割合が減っても現実的にはあまり困らない。アマゾン側は利用者があまり認識しない形でサービス水準を落とすことができるので、ヤマト以外の配送事業者で対応できる範囲までサービス・レベルを調整することはそれほど難しいことではないだろう。

 では長期的にはアマゾンはどのような対応を見せるのだろうか。おそらくはアマゾンはすでに開始している自社のリソースを使った独自配送網の拡張に動く可能性が高い。

 アマゾンは、お急ぎ便のサービスに加えて、有料会員を対象にアプリを通じて注文した商品を1時間以内に配送する「プライムナウ」というサービスも行っている。1回あたり2500円以上の注文が条件で、890円の配送料がかかるが(2時間以内でよければ無料)、運送会社ではなくアマゾンのスタッフが商品を直接配送する。
注文から1時間以内に配達する「プライムナウ」でアマゾンジャパンが開設した専門倉庫=東京都豊島区
注文から1時間以内に配達する「プライムナウ」でアマゾンジャパンが開設した専門倉庫=東京都豊島区
 先ほど、お急ぎ便のサービス内容が低下するという話をしたが、どうしてもすぐに商品が欲しいという利用者は追加料金を払っても「プライムナウ」のサービスを利用するはずである。プライムナウが利用できる範囲はまだ限定的だが、これが大きく広がれば、既存のお急ぎ便との棲み分けは十分可能となる。

 量販店大手のヨドバシカメラも昨年9月から、ネットで注文した商品を最短2時間半で届ける「ヨドバシエクストリーム」というサービスを開始している。すべての商品が対象になっているわけではないが、自社の配達要員が2時間半で配達してくれる(配送料は無料)。

 同様のサービスには、ディスカウント・ストア大手のドン・キホーテも参入している。同社の「majica Premium Now」サービスは、専用サイトで注文した2千円以上の買い物について、最寄りの店舗から最短58分で配送してくれる。対象エリアは店舗から半径約3キロ以内で750円の配送料がかかるが、2時間枠内での配送でよければエリアが半径5キロに広がり配送料も無料となる。

 ヤマトのアマゾンから一部撤退と値上げは、短期的にはネット通販にとって逆風だが、体力のあるネット通販事業者にとっては自社配送による顧客囲い込みを行うチャンスとなる。ネット通販のビジネスは今回の騒動をきっかけに大きな転機を迎えることになるかもしれない。