角井亮一(イー・ロジットチーフコンサルタント)

 2016年11月。その異変が起こりました。横浜市にあるヤマト運輸の支店で働いていた従業員がヤマト運輸の労働組合でなく、労働基準監督署に行き、残業代未払いなどの実態を申告しました。これまで「宅急便」の生みの親であり、ヤマト運輸創業者の故・小倉昌男氏と労働組合のタッグの強さは業界の中でも有名でしたが、その労働組合を頼らなかったのです。

 そして、1月24日。全国から902人が集まったヤマト運輸労働組合の「春季生活改善」中央討論集会では、さまざまな意見が飛んだそうです。結果、2月末から日経新聞が連日、ヤマト運輸の宅配ドライバーさんの悲鳴とアマゾンに対する値上げ、サービスレベルの引き下げなどの話題を報じ、テレビなどでも取り上げられました。

 私自身も、『とくダネ!』『スッキリ!!』などの情報番組やJ-WAVEなどのラジオにも出演し、冷静な解説に努めました。私の説明は「宅配ドライバーさんの長時間労働が根本問題」であるということ。値段よりも、仕事量や働き方こそに問題があると考えています。

 そもそも、なぜこの問題が起こったのでしょうか? その背景には、宅配個数の著しい伸びがあります。私は2020年代には宅配便60億個の時代が来ると思っています。過去には複数の企業間で連携して統合的な物流システムを構築する「サプライチェーンマネジメント」という製造サイクルの短期化という大きな1つ目の波があり、2つ目にインターネット革命によるネット通販の拡大がありました。そして今、IoT(モノのインターネット)革命による実店舗とネット通販が融合した「オムニチャネル」化宅配という3つ目のビッグウェーブが来ています。

 アマゾンがいなくても、60億個時代は来る。そしてインターネット通販の拡大は続きます。なぜなら、「私たち消費者が便利な買い物を求めている」からです。この問題を一番短期で効果的に解消するのは、数値で20%、体感値で35%もある再配達をゼロにすることです。

 では、なぜアマゾンばかりが槍玉に上がるのでしょうか? それは、拙書『アマゾンと物流大戦争』(NHK出版新書)で書いたようにアマゾンが物流によって、勝ち上がってきたからです。

 日本は以前からロジスティクス(物流)を重要視していませんでした。戦争でいちばん大事なのはロジスティクスですが、当時から日本では軽視されていました。一方、アメリカや中国はロジスティクス重視で、それは戦争だけでなくビジネスでも同じです。物流は戦うための支えになる戦略なのです。ロジスティクス重視の会社の業績が上がることは、セブン-イレブン・ジャパン、アスクル、花王を見ても明らかです。ボディブローやローキックのように、じわじわと相手を痛め、打ち負かす戦略なのです。

 そして、アマゾン。彼らはいま挙げた日本企業の数倍も物流を重視する会社です。かつて創業者のジェフ・ベゾスは「アマゾンはロジスティクスカンパニーだ」と語りました。いま、日本企業は、アマゾンにはロジスティクスによって勝てないと焦り始めています。アマゾンが、その重要性を私たちに教えたのです。