山森貴司(喫煙文化研究会事務局長)

9本の論文


 昨年8月末、厚生労働省の有識者検討会が「喫煙と健康影響」に関する報告書、いわゆる「たばこ白書」を発表。喫煙が、がんなど22種類の病気の発症や病気による死亡の要因であることは「確実」と断定したうえで、日本の受動喫煙対策は「世界最低レベル」であり、「屋内の100%禁煙化を目指すべきだ」と提言している。

 時を同じくして、国立がん研究センターは「たばこを吸わない日本人の受動喫煙による肺がんのリスクは、受動喫煙を受けない人に比べて約1・3倍に上昇すると発表した。その〝成果〟をもとに、肺がんに対する受動喫煙のリスク評価を従来の「ほぼ確実」から「確実」に格上げしている。

 この厚労省と国立がん研究センター発表を、8月31日付の新聞各紙はいっせいに報道した。

「白書として初めて、日本人での喫煙と病気の因果関係を(中略)科学的に判定した」「日本人で受動喫煙によるがんリスクが科学的に証明されたのは初めて」(以上、朝日新聞)、「複数の研究を統合し、対象数を増やして分析したことで明確な結果が得られた」(東京新聞)、また若尾文彦・国立がん研究センターがん対策情報センター長の話として「日本人でも受動喫煙が肺がんに影響していることが科学的根拠に基づいて示された」(同)。

 しかし、受動喫煙と肺がんの因果関係を科学的に判定、証明し、明確な結果が得られたという根拠はと言えば、受動喫煙と肺がんの関連を示した426本の論文のなかから、1984年から2013年に発表された九本の論文を選んで分析した結果だという。

 いったい426本の論文とはどういうものなのか、そのなかからどういう理由で9本の論文を選んだのか、その論文についてどんな分析を行ったのかは、各紙とも何の説明もしていないので、報道からはまったくわからない。