なぜ「疫学研究」と報じないのか


 つまり国立がん研究センターが分析・判定して受動喫煙の肺がんへの影響を「科学的に」証明した根拠というのは、九つの、おそらくは自分たちに都合のいい(?)疫学調査をいじくりまわしたというだけにすぎない。

 報道には「疫学研究」という言葉はいっさい出てこないが、疫学研究というのは、もともとは感染症の原因や動向を調べるもので、現在では広く病気の原因と考えられる要因と病気の発生の関連性について、その因果関係を統計的に調査することである。

 新聞の読者は、さぞ科学的医学的な研究が行われたのだろうと思うだろうが、実際はこれまでに発表された論文の統計学的な数字を操作しただけなのである。

実は統計的手法による疫学は、調査する人の立場や価値観(予断・予見)に左右されがちで、それが〝証明〟できるのは「相関関係」であって決して「因果関係」ではない。

たとえば、「解熱剤をのんだら熱が下がった」としても、その因果関係は証明できない。のまなくても熱は下がったかもしれないからだ。そのことは本誌連載の「医療エッセイ」で葦原祐樹氏が何度となく触れているとおりである。

 疫学調査から因果関係を見出そうとすれば、人によってまったく逆の結論に達することもままある。因果関係を決める要因は、その人の期待と願望、つまり「心」であるという意見さえある。決して科学的客観性ではない。

 にもかかわらず、各メディアは、どのような〝研究〟のもとに発表が行われたかをいっさい検証せず、ただ厚労省や国立がん研究センターという権威の発表をただ右から左に流すだけでなく、「科学的に判定した」「科学的に証明された」「明確な結果が得られた」と、まるで世紀の大発見扱いである。嫌煙運動を煽り立てているかのようだ。いや、結果的にはまさしく煽っている。近年、誤報や捏造が問題になることの多いメディアの、これも無自覚なプロパガンダの一つと言えるだろう。