タバコ対策で忘れてはならないのは、タバコ農家や産業、小売業など、現在タバコで生計を立てている人々(タバコ生活者)が、将来にわたって転作・転業できるような経済的援助と仕組み作りです。例えば、タバコから野菜への転作に必要な補助金とノウハウを提供などが、その一例です。そのためにも喫煙室設置の補助金を直ちに廃止し、タバコ増税も行うべきです。その歳入増を喫煙者の禁煙支援と併せて、タバコ生活者の「転作・転業」予算に回すなど、政府の包括的タバコ対策が是非とも必要です。

 東京五輪・パラリンピックの開催国として、FCTCの批准国としても要求されるグローバル・スタンダードのタバコ対策実施には、東京都ローカルの受動喫煙防止条例化では不十分で、国としてのタバコ対策の法制化が不可欠です。日本で対策が遅々として進まない大きな原因が、財務省所管の「たばこ事業法」の存在です。同法は税収増の目的でタバコ産業の発展を目指したものであり、国民の健康を犠牲にしている悪法です。速やかにこの悪法を廃し、タバコの害からの人々の保護を目的とした厚生労働省所管の「タバコ規制法」に置き換えるべきです。

 さて神奈川県や兵庫県などの受動喫煙防止条例策定の議論では、業界から「官が徹底できていないことを、どうして民間に先に規制するのか」との意見が相次ぎました。本学会が地方公務員の勤務時間内喫煙の実態調査を元に試算した日本の国家・地方公務員全体のタバコ休憩の時間に支払われる給料、タバコタイムサラリーは、年間920億円以上にのぼり、その結果は2015年11月7日付の産経新聞夕刊にも掲載されました。公務員の勤務時間内喫煙は職務専念義務に反し、莫大なタバコタイムサラリーは納税者としても到底納得できません。職員の喫煙離席は、非喫煙者同僚にも余分な負荷がかかります。喫煙離席者の業務代行や、その間の自己業務の中断に加えて、戻った喫煙者からの三次喫煙被害(呼気や服からのタバコ臭)という余計な「おまけ」まで付いてくるのです。

 まず「官より始めよ!」で、議会を含む官公庁が率先して民間の模範となるタバコ対策を実施することが必要です。勤務時間内喫煙は労働者の権利ではなく、全ての労働者が受動喫煙に曝(さら)されない快適職場環境を確保する権利が優先されるべきです。

日本タバコフリー学会の提案


 以上を踏まえ、NPO法人日本タバコフリー学会は、法律に盛り込むべき受動喫煙防止対策として以下の提案をさせて頂きます。

1.職場と不特定多数の人々が利用する施設は、例外なく屋内全面禁煙とする。電子タバコや加熱式タバコの使用も認めない。
2.職場と不特定多数が利用する施設の屋内に、喫煙室設置は一切認めない。喫煙室設置の補助金を廃止し、現在の喫煙室は可及的早期に廃止する。
3.官公庁・大学を含む学校・医療機関・社会福祉施設は、屋内・敷地内を全面禁煙化し、職員は勤務時間内禁煙とする。
4.違反した施設の管理者および喫煙者には罰則(罰金ではなく過料)を課する。

 毎年1万5千人もの死者を出し続ける受動喫煙は、迷惑の域をはるかに超えた「公害」で「命」の問題です。被害を防げない「分煙」や「喫煙室」のまま放置されて良いはずはありません。可及的早期に法律で、職場や公共の場を例外なく完全禁煙とし罰則付きとすることで、受動喫煙犠牲者を減らすことが国に求められる喫緊の責務と考えます。