がんを患って知ったことがあります。それは「人は苦難を乗り越えようとする強さを持っている」ということです。自分ががんになったことにどのような意味があるのか。すべてのことに意味があるならば、自分自身ががんを患うことにも意味があるはず。右往左往を経験しながらも、やがて一日一日を、一瞬一瞬を生きようと前を向きます。

 運命を受け入れ、自分の命を全うしようとするのです。しかしながら、この考え方には前提があります。それが運命ならば、ということです。もし自分のがんが何らかの外的な要因によって起こったとするならば、もし避けられることだったとすれば、話は違います。

 想像してみてほしいのです。他人の行為が原因で、もし自分の命に限りがあると告げられたら、それは患者本人だけの問題ではありません。家族、親しい友人、仕事仲間、周りにいる人すべてを苦しませます。
※写真はイメージ
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 想像してみてほしいのです。もし、自分の周りの大切な人が肺がんを患い、命を落とすかもしれない状況になったら…その原因にもしかしたら自分が関わっているかもしれないという疑念がでます。もう一度書きますが、昨年からリスクが「ほぼ確実」から「確実」へと移行し、健康被害や他者危害が明らかになりました。あなたはそれをもう知っています。「本当に受動喫煙は体に悪いの?」と逃げることはできません。これは「地獄」です。

 今、2020年の東京五輪・パラリンピックを視野に入れ、罰則付きの受動喫煙防止法案が進められています。この法案は受動喫煙による被害を未然に防ぎ、肺がん患者と周囲の人びとの苦しみのこれ以上の広まりを断ち切る、それが目的です。一日も早く実現することを願っています。厚生労働省には屋内全面禁煙の方針を貫いていただきたい。応援しています。

 日本における受動喫煙による年間死亡者数は、交通事故による死者4千人を大きく上回る、およそ1万5千人と推計されています。大事なことは、これは「救える命」である、ということです。それを放置し、苦しみを生み出すのはもう終わりにしなければならない、そう思います。

 ※本文中の統計は、『平成27年度厚生労働科学研究費補助金、循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」』と『 喫煙の健康影響に関する検討会「喫煙と健康――喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(2016年9月2日公表)』、アメリカ疾病管理予防センターの調査に基づくものです。