田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 フランス大統領選挙の第一回投票が行われた。投開票の結果、中道・無所属のエマニュエル・マクロン前経済相、そして極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首がそれぞれ1位、2位となり、5月7日の決選投票に進んだ。

 今回の選挙の争点は、欧州連合(EU)の枠組みの維持もしくは離脱、そして移民の受け入れをどう考えるかをめぐってのものになっている。マクロン氏はEUの枠組み堅持を訴え、保守・左派双方に目配りをした選挙戦術を展開してきた。他方で、ルペン氏はEUから国民投票・憲法改正によって離脱し、移民を制限する政策を訴えることで急速にその支持を拡大してきた。開票状況をみるとこの上位2人の得票数は肉薄したもので、今後半月ほどの選挙戦は白熱したものになるだろう。

 上位2人以外の主要候補の得票数も注目されている。3位と4位に終わった中道右派、共和党のフィヨン元首相は、EUの枠組み堅持を支持していて、敗北宣言の中でマクロン氏への投票を支持者たちに訴えている。また急進左派、左派党のメランション元共同党首は、政治的な立ち位置こそルペン氏と真逆なのだが、それでもルペン氏同様にEUの制約に縛られない積極的な経済政策を掲げることで、若者中心に急速に支持を拡大してきた。報道では、メランション氏は、支持者には自由投票を呼び掛けたようである。また5位につけている社会党のアモン前教育相は、反ルペンを訴え、そのため政治信条では異なるマクロン氏への支持を表明している。

 単純に第1回投票の票の割合を、ルペン対反ルペンで割り振ってみると、反ルペン票の方が大きく上回りそうである。しかし現状のフランスの中に潜在するポピュリズム的潮流や、移民問題への関心の高まりを考えると、決選投票がどうなるか予断を持たないほうがいいだろう。
4月23日、フランス北部エナンボモンで、支持者から祝福されるルペン氏(AP=共同)
4月23日、フランス北部エナンボモンで、支持者から祝福されるルペン氏(AP=共同)
 フランス経済のここ5年ほどの経済成長率は、平均すると0・78%(IMF推計)であり、ユーロ圏全体の状況も含めると長期停滞的な状況である。またフランスの失業率も悪い。もともと若年層中心に構造的な失業率が高いのだが、それでもこの数年は10%を超えている。先に若年層の不満が根強いと書いたが、その不満の背景にはこの失業率の高止まりが存在している。