佐藤健志(作家、評論家)

 2016年8月、第6代復興大臣に就任した今村雅弘衆院議員が、相次ぐ失言によって4月26日、辞任に追い込まれた。失言は救いようのないものばかりだが、では、なぜこのような失言をしたのか?
 これに対する最も簡単な説明は、本人の不見識のせい、というものだろう。しかし、問題の発言を振り返ると、それだけでは済まされないものが潜んでいるのだ。

 今村氏は4月4日、記者会見の席で「(被災地に)帰れない自主避難者は自己責任」という趣旨の発言をしてしまう。おまけに記者の一人に対して激高、「出て行きなさい!もう二度と来ないでください」「うるさい!」などと暴言を吐いた。

 このときは発言を撤回し、陳謝することで収拾をみたものの、3週間後の25日、所属する自民党二階派のパーティーにおける失言が致命傷となる。「荒海を航(い)く! 強いニッポンを創ろう」と題された講演のさなか、大臣は東日本大震災について、こう述べたのだ。
 「死者が1万5893、行方不明者2585、計1万8478人。この方が一瞬にして命を失ったわけで。社会資本の毀損(きそん)も、色んな勘定の仕方があるが、25兆円という数字もある。これはまだ東北で、あっちの方だったから良かった。これがもっと首都圏に近かったりすると、莫大なですね、甚大な被害があったと思う」
二階俊博幹事長(前列左から2人目)から離れた場所で乾杯する今村雅弘復興相(右から2人目)=2017年4月25日、東京都千代田区
二階俊博幹事長(前列左から2人目)から離れた場所で乾杯する今村雅弘復興相(右から2人目)=2017年4月25日、東京都千代田区
 報道によると、講演後の懇親会に現れた安倍総理は、開口一番「今村復興大臣の講演の中におきまして、東北の方々を傷つける、極めて不適切な発言がございましたので、総理大臣としてまずもって、冒頭におわびをさせていただきたいと思う次第でございます」と発言。会場の空気は凍りつき、年に一度のパーティーは暗転したと伝えられる。
 4月25日の講演は、「自己責任」発言からの名誉挽回をはかるチャンスとして、二階派がわざわざ用意した「ひのき舞台」だったという。よりによってその席で、前回以上の大失言をしでかしたのだから、まさしく自滅的と評さねばならない。ひょっとしたら「首都直下地震や南海トラフ地震にたいする対応を万全にすべきだ」と述べたかったのかも知れないが、これでは「東北だったら震災にあっても構わない」と言ったも同じではないか。

 政府・与党の間でも、今村氏をかばう声はほとんど聞かれなかった。公明党の大口善徳・国対委員長は、「言語道断。本当に許し難い」とバッサリ。みずから復興大臣を務めた経験がある自民党の竹下亘・国対委員長も、「被災者の皆さん方の気持ちを思うと、なんでこんなこと言ったんだろうという怒りに近い感情を覚えました」とコメントする。

 こうした、誰もがかばいきれない今村氏の発言は、次のような論理構造に基づいて成立しているのだ。