黒田日銀のマイナス金利は金融業界を中心におおむね不評だが、一方で大歓迎している業界がある。その一つが相続税の増税に加え、低金利が二重の追い風となっているアパート・マンション建設や長期の不動産管理を手がける企業群。経済紙の記者が解説する。

 「サブリースと呼ばれている業界の景気はすごくいい。東証1部の大東建託やレオパレス21などが最大手で、特に大東建託は『いい部屋ネット』のCMが耳にタコができるほど流れたことからもわかるとおり右肩上がりの業績。2016年3月期の決算は売上高が過去最高の1兆4116億円に上り、8期連続の増収増益。17年3月期も過去最高を更新する勢いです。経営陣の鼻息も荒く、東京五輪後の21年には売上高1兆8000億円を目指すという中期計画を発表しています」

 大東建託は1974年創業だから、40年で1・5兆円企業に成長したことになるが、そのビジネスモデルはいたってシンプルだ。遊休地を持つ地主に営業マンが接触してアパートを建設させ、その新築アパートを最長35年間、家賃固定で一括借り上げて、地主に代わってアパート経営をするのである。

 地主にしてみれば、遊んでいる土地を活用できるうえ、家賃収入が増えたり減ったりする空室リスクを心配しなくて済む。従って、全額丸々借金でアパートを建築したとしても、返済計画を立てることが容易だ。さらに入居者募集や退去手続き、修繕やら清掃やらの諸々の雑務に煩わされる心配もない。しかも貸アパートは帳簿上の資産価値が下がるため、相続税対策としても有効で、なおかつ事業ローンであっても銀行融資の金利は史上最低。つまり、一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなる話なのだ。「しかし……」と経済部記者が続ける。

 「実は、この一括契約が後に問題となるケースが多くなっています。というのも、大東建託を含め多くの場合、家賃固定は当初の10年だけ。その後は空室率などを計算し直して、家賃の改定がおこなわれ、大概の場合は大幅減額になる。営業マンのセールストークを真に受け、まるまる事業用ローンを組んでしまったような場合、10年後には、毎月のローン返済を家賃で賄えなくなる場合もあるのです」

 例えば、30年の事業用ローンを組んで5000万円の借金をしてアパートを建設した場合、10年後に約3000万円の残債が残った状態で、大家は毎月、返済に不足する分を持ち出ししなければならないことになるわけだ。さらに5年後、家賃が見直されてさらに減ることになれば、返済不能の状況に陥ることも想像に難くない。

 そのため「こんなはずではなかった」と国民生活センターなどに駆け込むケースが目立ってきており、実際、大東建託に限らず、目下、サブリース業界全体でこの種の苦情が急増中なのだ。

 これに行政側が応えたのが、国交省による「賃貸住宅管理業務処理準則」の改定だった。昨年8月中旬、国交省は、業者側が大家に対し、将来、家賃が下がる可能性があるという事実を重要事項として説明したり、書面を渡したりしなければならないとルールを変えたのである。逆に言えば、これまではこの点を曖昧にしていても、業者側が厳しいペナルティーを取られることはなかったのである。