山岡俊介(ジャーナリスト)

 株取引をめぐる証券会社とのトラブルと言えば、顧客のほうは圧倒的に高齢者が多いことをご存じだろうか。

 ネットでの売買が当たり前の今日、ネット上でおこなう単純な売買注文に関しては、トラブルはまずあり得ない。あるのは対面取引の場合だ。

 対面の場合、手数料はネット取引より割高になるが、それでも対面で注文するケースがあるのは、「対面でやりとりしたほうが信頼が持てるから」なんていうのはむろん実態を知らない者のセリフで、要するにインターネットが不得手、あるいはパソコンやスマートフォンの操作ができない者、すなわち高齢者がやむなく利用しているからだ。対面だけにつけ入る隙も多く、結果、高齢者とのトラブルが多くなっているのだ。

 たとえば、独立系準大手証券「岡三証券」(東証1部上場)の仙台支店から勧誘を受けた男性(69)は、2013年9月、「グーグル」「ツイッター」などの外国企業6社の株式を約1000万円分購入したが、岡三証券の担当営業マンは、約1年にわたり、実際より高い虚偽の株価を顧客男性に教えていたことが昨年5月、明らかになっている。

 14年11月、男性の妻が営業マンに運用状況を聞いたところ、態度がおかしかったことから、不審に思って上司に釈明を求めると、実際は約310万円の損失が出ていたのに、56万円の損失と報告していたという。

 その岡三証券仙台支店では、昨年5月にも、高齢者の顧客に多額の損害を負わせていた事実が発覚している。交通事故でショック状態の女性(80)に営業をかけ、十分な説明をしないで売買を繰り返させた結果、741万円の損害が出たという。
 この女性は07年7月、夫が運転するクルマに同乗していたところ事故に遭いアゴの骨を折る重傷を負った(夫は死去)。そのショックから精神安定剤を服用、株取引に要する判断力を失っていたが、仙台支店の以前からの担当者が入院先の病院を訪れては取引を勧めたため、09年10月までの間に海外社債など実に79回も売買を繰り返していた。

 なお、この件では女性は提訴。和解ながら岡三証券は違法行為を確認したうえで、女性側に解決金として285万円を支払った。

 それにしても、異様とも思えるのは、この2つのケースとも、金融商品取引法違反に抵触する可能性が高いと思われるのに、地元紙の取材に対し、岡三証券は「個別事案につき、回答できない」(広報部)と実質、取材拒否し、何の反省の色も見せていないことだ。

 実は岡三証券は表面化したこの2件以外にも、さらに悪質かつ巨額の損失を顧客に負わせていた重大疑惑がここにきて明らかになってきている。

 新たに発覚した被害の舞台は岡山支店。被害男性を仮にS氏としておく。

 現在75歳のS氏が対面方式で株式売買を始めたのは、勤めていた会社を定年退職する約1年前の2000年ごろ、60歳の時だった。当初利用したのは「国際証券」(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)で、種銭は老後資金にと貯めていた数千万円。

 03年1月ごろ、国際証券でS氏を担当していた営業マンが岡三証券に転職したことから、S氏も口座を岡三に移管した。問題が起きたのは、10年に担当者がK氏に代わってからだ。S氏は株取引を始めた当初、現物株の売買しかしなかったが、06年4月以降、勧められるまま信用取引にも手を出すようになっていた。しかしS氏は、信用取引とはいかなるものか十分に説明してもらっておらず、理解もしておらず、12年1月、いったん信用取引を打ち切ることにした。

 ところが14年4月ごろ、K氏にしつこく勧誘され、仕組みを理解しないまま信用取引を再開。その後、K氏がS氏に無断でS氏名義で信用取引をしていたことが同年7月ごろに発覚する。S氏が苦情をいうと、担当がK氏からH氏に変わったが、そのH氏も、呆れたことに、S氏に信用取引を継続させていたというのである。