――プロ棋士になるための必須要件の1つに「詰将棋」があります。藤井四段はタイトル保持者を含むプロ棋士たちを抑え、2年連続「詰将棋回答選手権」で優勝していますが、詰将棋の楽しみを教えてください。

聡太 詰将棋は、配置された将棋の局面から王手の連続で相手の玉将を詰めるパズルのようなもので、終盤にかけて何か筋が見えた瞬間に快感を覚えます。詰将棋が自分を強くしてくれたと思っています。

――お母さまにお聞きします。5歳から将棋をずっと続けていた藤井四段をご覧になっていて、性格に何か変化はありましたか。

裕子 どちらかというと、いい変化のほうが大きいですね。集中力が身に付いたことで、長時間ジッと座っていられるようにもなりました。

 一方で、怒りっぽくなった印象があります。普段はほとんど怒ることはないのに、対局に負けると、不機嫌になるんです。外では抑えているのでしょうけど、家に帰ってくると、すごく悔しがっているのが伝わってきます。

聡太 負けたことが許せないというより、自分の弱さを痛感させられるんです。それが純粋に悔しい。

――藤井四段自身は自分の弱さをどう分析しているのですか。

聡太 先ほど母は、「集中力がある」と述べましたが、自分では集中力がないと思っています。目の前の対戦相手と対局していても、隣の対局のほうが気になってしまう。10分に1回ぐらいの間隔で、隣の対局の進捗が気になってしまうんです(笑)。

――自分の対局に必死で、横を見る余裕はないのでは?

聡太 ほかの対局が気になる棋士は、僕に限らずたまに見かけます。三段の試合に出場している棋士のなかには、席を立って、二段以下の対局を見に行く人もいました。三段の対局を見るのは気が重いから、二段以下、つまり自分に関係ない将棋を見て気分転換をしているらしいです。

裕子 私はもっと、集中したほうがいいと思うな。

聡太 もちろん、つねに目の前の対局に集中できればいちばんです。でも、緊張感のある対局のなかで、集中力を持続するのは意外に難しいんです。息抜きというわけではないですが、多少、気分を緩めることも必要かなという気もします。