来年10月に予定された消費税率10%への引き上げの先送りは、産経は「やむなし」、読売が「選択肢の一つ」と容認したのに対し、経済状況の認識の違いなどから朝日、毎日、日経は否定的な見解を示した。増税先送りと一体の衆院解散の是非でも各紙の見解は分かれ、朝日、毎日は「大義なし」と断じた。

 産経は「4月の消費税8%への増税以来、個人消費の伸び悩みなどから景気は確かな回復に至っていない」とし、「予定通りの再増税を決めれば景気の腰折れを招き、デフレ脱却が果たせない恐れがある」と主張した。読売は2四半期連続のマイナス成長となった7~9月期の国内総生産(GDP)の発表を受け、「合理的な判断」と踏み込んだ(18日付)。

 先送りに伴うリスクと増税の必要性はこの両紙も認めている。「日本の借金は国と地方を合わせてGDPの2倍超に上り、先進国で最悪の水準にある。増税をずるずると先送りしていると国際的に疑われれば、日本国債への信認は低下する。金利の急騰などによって財政破綻を招く恐れすらある」(産経)。両紙は先送り後の再増税の時期を明示するよう強く求めた。

 これに対し朝日は、「確かに、足もとの景気は力強さにかける。とはいえ、08年のリーマン・ショック時のような経済有事とは違う」とし、「景気が振るわないなら、必要な対策を施しつつ増税に踏み切るべきではなかったか」と論じた。また、「首相が公式にはひと言も発しないまま、重要な政策変更が固まる。もちろん、議論がないままに、である」とGDP発表前の先送りの既成事実化を問題視した。

 「世界経済は米国をけん引役に回復基調を保つ。日本も消費の回復が遅れているとはいえ、政府・日銀の政策で景気下支えは可能だ」と主張するのは日経だ。毎日は「増税を先送りするほど経済状況が深刻なのか。仮にそうだとすれば、安倍(晋三)政権が取り組んできた経済政策に問題はないのか」とアベノミクスに批判の目を向けた。

 ただ、GDP発表後の18日付では、朝日、毎日も真っ向から反対せず、「持続的な社会保障制度を構築するには、増税が避けて通れない道であることに変わりはない」(毎日)といった原則の確認にとどめ、日経はこのタイミングでの増税決定は難しく、是非は「10~12月期以降の景気の足どりを確認してから最終判断する手もあったのではないか」と指摘した。

 衆院解散では読売が「国民の信任を改めて得ることで、重要政策を遂行するための推進力を手に入れようとする狙いは、十分に理解できる」と評価した。

 閣僚の政治とカネをめぐるスキャンダル追及で、臨時国会の審議は停滞している。「支持率が高いうちに解散を断行して局面を打開し、新たな民意を得るとともに、陣容を一新して政治を前に進めるのは、有力な選択肢と言える」というのだ。

 産経は「税財政政策の大きな転換で国民の信を問うことはおかしくはない」としながらも、「再増税延期と解散総選挙を結びつけた判断には、与党内や経済界にも異論がある。首相自身が延期の判断理由や今後とるべき対策について、国内外に丁寧に説明することが極めて重要だ」と首相に注文を付けた。

 一方、朝日は「原発再稼働や集団的自衛権の関連法整備が控える来年に衆院選を戦うのは厳しい」といった声が与党幹部から聞こえてくるとし、「まさに党利党略」「政策目標よりも、政権の座を持続可能にすることの方が大切だと言わんばかりではないか」などと与党を厳しく批判した。毎日は「増税に慎重な世論に乗じて選挙にまで利用しようという発想が感じられる」と「あざとい」という表現で口を極めて論難した。

 安倍首相には、これらの注文、批判も踏まえ、いま衆院を解散する意義、再増税の時期の明示やそのための景気対策、成長戦略の具体化など、争点となる明確な公約を掲げてほしい。

(内畠嗣雅)