だが、これは端的な誤解である。以下の図表を参考にしてほしい。
※世帯主が60歳以上の世帯の割合は、全国消費実態調査の二人以上の世帯における割合
※世帯主が60歳以上の世帯の割合は、全国消費実態調査の二人以上の世帯における割合
 この図は総務省統計局の栗原直樹氏の解説記事「食料への支出の変化を見る(平成26年全国消費実態調査の結果から)」に掲載されていたものである。

 「エンゲル係数の推移を見ると、平成元年から平成16年にかけて低下していましたが、平成21年以降上昇しています。これは、エンゲル係数が、世帯主が60歳以上の高齢の世帯では高い傾向があるため、高齢化に伴って高齢の世帯の割合が上昇していることなどが全体のエンゲル係数の上昇にも関係」している、と栗原氏は解説している。

 人は高齢化すると、あまりいろいろなものにお金を使わなくなる。そのため高田保馬のいうところの生存費にあたる食費の割合が増加するのだ。当然エンゲル係数は上昇する。おしゃれに気を使い、積極的に社交の場に出る高齢者の方も増えているので、高田の誇示費にあたる支出も増えていいように思えるが、実際には高齢化は、「消費の保守化」と等しいようだ。高田保馬的にいえば、高齢化は充実費や誇示費を抑制していることになる。

 エンゲル係数は基本的に高齢化の進展でこれからも上昇トレンドにあると思うが、その他の要因でも影響が起こる。代表例としては、所得が上昇すると外食が増えることでエンゲル係数がやはり上がる。共働き夫婦になると、外食やコンビニなどでの買い物も増える。このこともエンゲル係数の底上げに貢献しているだろう。

 エンゲル係数が上昇していることで、日本がより貧しくなっているとはどうもいえないようである。

 そもそも最近では、失業率の低下、有効求人倍率の改善も一段と進んでいる。パートやアルバイトの時給も都市部を中心に増加傾向にある。それだけではない。倒産件数や自殺者数の低下傾向もある。このようにわかりやすい範囲でも、経済状況が改善している中で、どうにかしてアベノミクス(その中核であるリフレ政策)を、「日本が貧しくなることに貢献している」と思わせたい人たちがいるようである。そのような人たちにとって、エンゲル係数の上昇は、かっこうの批判のための批判の道具なのだろう。