昭和25年6月に北朝鮮の南進による朝鮮戦争が勃発した。駐留米軍は、この戦争に参戦したため、国内の治安維持のため警察予備隊が創設された。これがその後、自衛隊になっていく。

 憲法9条2項には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と明記されているにもかかわらず、なぜ自衛隊を保持できるのか。防衛省のホームページには、次のようにある。

 「平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いています。もとより、わが国が独立国である以上、この規定は、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではありません。政府は、このようにわが国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められると解しています」

 これが自衛隊合憲の論理立てである。

 憲法の専門家などの一部では、芦田修正(憲法改正小委員長だった芦田均による修正)によって、9条2項に「前項の目的を達するため」という文言が挿入されたことによって、侵略を目的とする戦争や武力行使のための戦力は保持できないが、自衛目的の戦力なら保持が可能になったという説もある。ただ歴代政府は、この解釈は採用していない。そのため自衛隊を「戦力」ではなく、「自衛力」としてきた。

 自衛隊は、国際的には軍隊と見なされているにもかかわらず、軍隊ではないというのが政府見解である。しかし、この憲法解釈が憲法改正の足かせとなってきた。「自衛のための合憲の実力組織があるのだから、9条改正は必要ない」という理解を生んでしまったからだ。
 
安倍晋三首相(右)も出席した「新しい憲法を制定する推進大会」であいさつする中曽根康弘元首相=5月1日、東京都千代田区の憲政記念館(飯田英男撮影)
安倍晋三首相(右)も出席した「新しい憲法を制定する推進大会」であいさつする中曽根康弘元首相=5月1日、東京都千代田区の憲政記念館(飯田英男撮影)
 「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という憲法9条2項は、普通に読めば軍隊そのものの自衛隊は保持できないとするのが当然だろう。これを合憲だとしてきたことにそもそも無理があるのだ。合憲としてきたことが足かせとなって、逆に憲法改正を提起できなくなってきたのである。

 憲法学者の圧倒的多数も自衛隊を違憲としている。だがこれらの人々が違憲の自衛隊の即時解散を主張しているかといえば、そうではない。たとえ違憲の立場にたってはいても、自衛隊の存在意義は認めているのだ。これは憲法学者だけではなく、一般の国民も同様だろう。

 だったらこの際、改憲を本気で目指すのであれば、自衛隊は違憲であるという立場から出発すべきなのだ。「自衛隊は違憲です。しかし、米ソが対決する当時の国際情勢のもとで自衛隊を創設するしかなかったのです。自衛隊はいらないという人はいないでしょう。この際、憲法9条を改正して、曲芸のような憲法解釈ではなく、憲法に沿った自衛軍を堂々と持つようにしましょう」というように。

 逆に護憲派は、日本共産党のように「自衛隊は違憲の軍隊」というのではなく、「自衛隊は合憲です。だから9条改正の必要はありません」と主張すべきなのだ。

 改憲派と護憲派は、主張が逆立ちしているのだ。