近くて遠い。言いふるされたそんな言葉が、いまもなお実感される土地。人々の暮らしを、ありのままに知ることさえも難しい隣国。初沢亜利は、その分厚い壁に挑んだ。主義主張や国家というシステムの介在しない写真を撮ることを試みて、地方での取材も実現させる。

 巻末の「滞在記」に悪戦苦闘の経緯が記されるが、自作を突き放すかのような一文が印象的だ。〈北朝鮮の真実である、というつもりは毛頭ない。真実とはそれ自体多面的なもの〉。単眼では見えなくなってしまうものがある。収められた写真たちは静かに、でも確かに、そう語っている。
 ※写真は「隣人。38度線の北」(徳間書店)より掲載。