ところで、「朴槿恵後」の韓国を統治することになったのは、文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党前代表である。文在寅新大統領は政権発足早々、対米関係の文脈では米韓FTAとTHAAD配備の扱いに取り組まなければならない。文在寅新大統領は、従来の彼の言動から推察する限りは、THAAD配備費用負担要求を突っ跳ねるであろうし、事の次第によってはTHAAD配備同意それ自体の撤回に走るかもしれない。仮に、文在寅新大統領がそのような挙に出れば、米韓同盟の先行きはいよいよ怪しくなる。
韓国大統領選の投票締め切り後、支持者の前に現れ声援に応える「共に民主党」の文在寅氏=5月9日夜、ソウル(共同)
韓国大統領選の投票締め切り後、支持者の前に現れ声援に応える「共に民主党」の文在寅氏=5月9日夜、ソウル(共同)
 そうであるならば、米韓FTAとTHAAD配備の扱いに関して、トランプ大統領麾下の米国政府が、韓国にとっての「頭痛の種」をまいてきた思惑が浮かび上がる。一つの解釈は、韓国にとって癇(かん)に障る要求を突き付けることで、「文在寅の韓国」に「本当に『こちら側』に与(くみ)する気があるか」と「踏み絵」を迫ったというものである。

 そうでなければ、もう一つの解釈としては、「文在寅の韓国」の「親北朝鮮・離米」傾向を見越した上で、北朝鮮情勢対応でささやかれる米中両国の「談合」の一環として、「西側同盟ネットワーク」からの韓国の「切り離し」を考え始めているというものである。米国にとってアジア・太平洋地域において絶対に維持されるべき「権益」が朝鮮半島ではなく日本であり、中国が朝鮮半島全域を自らの影響圏内にあるものだと認識しているのであれば、そうした解釈によるシナリオも決して荒唐無稽だとはいえまい。

 「文在寅の韓国」は、果たして米国を含む「西側同盟ネットワーク」に忠誠を尽くすのか、それとも米中両国の「談合」に乗じて南北融和の夢を追うのか。韓国には、そうした旗幟(きし)を明確にすべき刻限が来ている。

 日本政府が「文在寅の韓国」に対して示すべき政策方針は畢竟(ひっきょう)、一つしかない。それは、韓国が米国を主軸とする「西側同盟ネットワーク」の一翼を担うということの証しを立てさせることである。朴槿恵政権末期の永き「大統領の不在」状況に加え、文在寅新大統領が「親北朝鮮・離米」傾向をもって語られてきた政治家であればこそ、そうした証しの意義は重いものになる。

 その証しには、具体的にはTHAAD配備の円滑な実行は無論、日韓慰安婦合意の確実な履行も含まれる。日韓慰安婦合意がバラク・H・オバマ米国前大統領麾下の米国政府の「仲介」によって成り、往時の米国政府の「歓迎」を得た文書であるならば、それは、「西側同盟ネットワーク」の結束を担保する文書でもある。この際、日本政府としては、日韓慰安婦合意を「歓迎する」としたオバマ前政権の評価をトランプ政権が踏襲していることの確認を求めるのが宜しかろう。

 日本にとって対韓関係は、対外政策上の「独立変数」ではない。それは、「西側同盟ネットワーク」を円滑に機能させるための政策展開における一つの「従属変数」でしかない。そうした割り切った姿勢は、「文在寅の韓国」を迎える上では大事である。