では、新大統領はいかなる政策を遂行するのか。ここでは文氏が核実験とミサイル発射を繰り返す北朝鮮にどのように対応し、また日韓関係はどのように変化するのか、この2点に絞って考えたい。

 これらを予測するにあたっては、盧氏の行跡が参考になる。盧氏が金大中の「太陽政策」を継承し、ズブズブの親北朝鮮路線をとっていたことはよく知られている。あろうことか在任中に北朝鮮の核兵器開発やミサイル発射を容認する発言を行い、北朝鮮に手厚い経済援助を与えただけでなく、支持率が急落した政権末期には突然平壌を訪問して金正日総書記と何らの必要性もない会談を行っている。

 文氏も米軍による戦術核の韓国再配置に否定的であり、THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備にも及び腰である。その一方で、北朝鮮の開城工業団地を再開すると公約している。ちなみに今回の大統領選に出馬した有力5候補の中で開城工業団地の再開を公約していたのは文氏だけだった。

 文氏は北朝鮮の核問題について「韓米同盟強化と周辺国家との協力を通じた根本的解決」を公約として掲げているが、いったい北朝鮮への融和的姿勢と「韓米同盟強化」をどうやって両立させるつもりなのだろうか。THAAD配備に及び腰なのは恐らく中国の顔色をうかがっているからだろうが、この辺り「東アジアのバランサー」という空虚な言辞を弄びながら、何の目算もなく親北朝鮮・反米反日的な発言を繰り返した末に、北朝鮮に核実験を強行された盧氏の外交姿勢を彷彿(ほうふつ)とさせるものがある。

街頭演説に臨む「共に民主党」の文在寅候補
=5月8日、韓国・ソウル(川口良介撮影)
街頭演説に臨む「共に民主党」の文在寅候補 =5月8日、韓国・ソウル(川口良介撮影)
 恐らく、在任中には対北朝鮮政策をめぐって日米と何の得にもならない摩擦を起こし、「民族和合」という美名の下に北朝鮮をあれこれ援助し、結局は金正恩のいいように手玉に取られるのではないだろうか。

 むろん、日韓関係については「絶望的である」と言わざるを得ない。これまでもそうであったように、これからもろくなことが起こらないだろう。日本では朴前大統領が史上最悪の「反日大統領」だと思われているが、文氏はその比ではない。

 なにしろ、日本政府との慰安婦合意を反故(ほご)にする、ということを堂々と選挙公約に掲げているのである。このような反日姿勢も、あらゆる機会を捉えて日本非難に熱を上げていた盧氏に通じるものがある。ちなみに今回の大統領選有力5候補はすべて「日本政府との慰安婦合意は無効」と主張していた。そう主張しないと落選することは火を見るより明らかであり、有権者の大多数が「反日」という韓国の内情をよく表している。このような有権者によって選ばれた大統領が反日であるのは当然の帰結であろう。

 おまけに昨年には竹島(韓国名・独島)にも上陸しているし、「親日(派)清算をしたい」となどと公言し、「真実と和解委員会」なるものを設置して過去の歴史を総括する、とも述べている。これは盧政権下で結成された「親日反民族行為真相糾明委員会」が「親日派名簿」を作成し、一部の「親日派」の子孫の財産を没収したことの模倣と思われる。