北条かや(著述家)

 国内最大のフリーマーケットアプリサービス「メルカリ」で、「現金が額面以上の値段で売られている」「チャージ済みのICカードや旅行券が売られている」、さらには「妊娠米」など怪しげな物品が散見されるとのニュースが飛び交った。筆者もメルカリの利用者なので見てみると、確かに「1万円札4枚」が4万7000円(送料無料)などの価格で出品されている。今すぐ手元に現金が欲しい多重債務者などが、クレジットカードで購入している可能性もあり、マネーロンダリング(資金洗浄)にもつながる可能性がある。

 指摘を受けて運営側は4月末、監視体制を強化し(「メルカリ、安心・安全への取り組みについて」)、「現行の貨幣を出品禁止」とすること、さらにメルカリ側が「24時間体制で監視・削除の対応」を行っていくことを発表した。なぜこのような怪しげな出品が相次ぐのか。筆者もメルカリや同業のフリマアプリ「フリル」などの利用者であり、売る側、買う側それぞれの立場を経験している。本稿ではその経験もふまえ、フリマアプリで行われているさまざまなモノの売買を「優しさのあふれる空間」というキーワードから読み解いてみたい。

 メルカリなどのフリマアプリサービスは、2012年頃に誕生したといわれる。それまでインターネットで個人が売買するサービスといえば「ヤフオク」「モバオク」「楽天オークション」など、大手企業が提供する「オークション型」が中心だった。現在は楽天オークションがサービスを中止し「ラクマ」というフリマアプリの提供をスタートしたため、事実上ヤフオク、モバオクしか残っていない状態だ。
 CtoC(個人間取引)のみならず、BtoC(企業対消費者)取引のプラットホームとして非常に優れているが、最大手のヤフオクに出品するためには毎月の利用料が400円ほどかかり、売れても売れなくてもサービスにお金を払わなくてはならない。クレジットカードの登録が義務付けられるなど、利用者にとってはややハードルが高かった。すくいきれないニーズがあったのも事実だ。

 そこに目をつけたのがフリマアプリだ。最大手のメルカリは、急速に普及したスマートフォンを「フリーマーケット」のプラットホームに変えた。その手法はあざやかだ。ネットオークションに敷居の高さを感じる人や、これまでオークションを利用してみようとすら思わなかった若者や女性、主婦層などでも「使ってみよう」と思えるシンプルなインターフェース(使用感)に加え、「簡単」「安心・安全」のキャッチコピーを売りに急成長したのである。幅広い層に訴えかけるテレビCMも功を奏し、14年頃から認知度が急上昇。現在は国内で3000万ダウンロード数を誇るという。