そもそもパワハラの問題は、青林堂事件だけの問題ではない。実は昨今、労働問題を扱う業界で深刻なのは「いじめ・嫌がらせ」事案の増大である。

 たとえば、厚生労働省が毎年6月ごろに公表している全国労働局に寄せられる労働相談では、平成24年度以降「いじめ・嫌がらせ」が1位となっている。平成27年度は、約6万6千件の相談があり、2位の解雇(約3万8千件)に大きく水をあけてダントツである。

 相談に行くということは、それだけでハードルがあるのだが、それを差し引いても約6万6千件であるから、この裏にはどれだけ多くの労働者がハラスメントに苦しんでいるかが分かると思う。

 こうした状況を踏まえ、厚生労働省は平成23年、先の分類の提言をした「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を開き、パワハラの定義や対応について専門家の意見を聴取するなどした。残念ながら、この会議は、提言・報告を出すにとどまり、立法などの動きにつながることはなかった。

 現在の安倍政権も、パワハラ問題を無視することはできず、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日閣議決定)には、「職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行う」として、何らかの対策の検討を行うことを記している。

 なお、政策として必要なのは、「パワハラ防止基本法」のような法律を制定して、腰を据えた対策が行われることであろう。そうでなければ、この問題は「当事者同士の問題」として矮小(わいしょう)化されかねない。しかし、セクハラなどと同じように、基本的にパワハラは違法であるとする明確な法規範があれば、企業の取り組みは変わってくるものである。

 いずれにせよ、パワハラは社会問題となっており、国の政策として何か対策をとらねばならないところまで深刻化しているのである。

 では、労働者はこうした時代にどうやって自分の身を守ればいいのだろうか。

(本文とは関係ありません)
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 青林堂事件のように、暴言などのパワハラを受けた場合、まずは証拠を確保することが何よりも大事である。その際、録音が客観的な証拠として価値が高い。青林堂事件では、パワハラが日常化していたために、多くの録音記録が存在している。

 あまりに多くて、訴えの提起にあたり選別するのが非常に大変であった。そのため、普通なら問題とすべき発言が、他のひどい発言に比べてレベルが低いと、「これは大したことないね」となってしまって、感覚がまひしてしまったほどである。

 なお、対話者に無断で録音することが違法であるかのような誤解があるが、そんなことはない。職場におけるトラブルがある場合に、証拠保全の意味で録音することは問題ない。むしろ、労働者が取りうる唯一の証拠収集における対抗手段といっても過言ではない。