裁判例でも、録音手段・方法が著しく反社会的ではない限り、これを証拠として認める旨判示している(東京高裁昭和52年7月15日判決)。最近の裁判例でも否定例は極めて例外的な場合のものしかないので、被害を受けている場合は、気にすることなく録音することが必要である。

 一方、使用者側に期待されるのは、職場におけるいじめ・嫌がらせは、企業経営にとってマイナスしかないことを自覚することである。

 そもそも、そのような問題が発生していること自体恥ずかしいことだという認識を持ってもらいたい。先に挙げた円卓会議において、ある企業の人事担当者の言葉として、次のようなものがある。

 全ての社員が家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんだ。そんな人たちを職場のハラスメントなんかでうつに至らしめたり苦しめたりしていいわけがないだろう。

 誰かをいじめてうつにすることは、その背景に多くの悲しみが生まれることを自覚することが必要である。社員は人間であり、ロボットではない。ましてや機械でも道具でもない。その当たり前を自覚することが第一歩である。相手は自分と同じ生身の人間なのである。

 近年は、まともな企業や労働組合が機能している企業においては、こうした意識が徐々に高まり、パワハラになり得る行為類型を冊子やパンフレットなどにして全社員に配布し、啓蒙(けいもう)している企業もある。

 本来は、こうした取り組みが一般化される必要があるだろう。一方で、社長が先頭に立ってパワハラするような企業は論外である。これについては、一つ一つ正していくほかない。

(本文とは関係ありません)
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 青林堂事件は、ハラスメントの陰湿さと、それを支える証拠が多くあることでたくさんの注目を集めた。しかし、俯瞰(ふかん)的に見れば、これはわが国にはびこるパワハラ事件の一つに過ぎないのである。もっとも、一つに過ぎないとしても、これだけ注目が集まった事件である。青林堂には、パワハラを行ったことについて、しっかり責任を取っていただきたい。

 また、労働者はこうした時代であるので、身を守る術を身につけ、何かあれば第三者に相談してほしい。一人で抱えても解決しない。労働組合や公的機関など、相談窓口は多い。

 そして、国は「働き方改革実行計画」に記載したのだから、「啓発」「啓蒙」だけで終わることのない政策を実行してほしい。これについては与野党一丸となれるのではないだろうか。パワハラを撲滅するのに右も左も関係ないのだから。