藤めぐみ(レインボーフォスターケア代表理事)

 この4月、大阪市の男性カップルが里親に認定され、子どもを育てているというニュースが各種メディアで何度も流れた。関西地域では新聞の一面に大きく取り上げられるなど、全国のほとんどの新聞やテレビで報道された。そしてまた、ネット上では多様な意見があふれた。

 私は2013年に任意団体「レインボーフォスターケア」(2015年一般社団法人化、以下「RFC」)を設立した。「同性カップルも里親に」をミッションに掲げて講演会やロビーイングを続けてきたが、今回の報道に対して実はかなり戸惑った。というのも、これまで同テーマに対する人々の反応が薄かったため、これほど大きく取り上げられるとは思わなかったからだ。

 近年、LGBTをめぐるさまざまな取り組みは大きな進展を見せている。しかし、今回報道された「同性カップルと里親制度」については、多くの人から関心を持ってもらえなかった。そもそも、児童養護施設や里親制度といった「社会的養護」自体に世間の関心は低く、ある人からは「『同性カップルと社会的養護』ですか。マイノリティーとマイノリティーの話で、『超マイナー』な感じですね」などと言われた。

 このように「同性カップルが里親になるなんて、しょせん『超マイナー』な話、到底実現できるわけがない」と世間が思っていた中で、それが実現したからこそ、このような大きな関心を集めたのかもしれない。

 なぜ、同性カップルが里親になることが「実現できるわけがない」と思われてきたのか。それは、里親制度があまり知られておらず、養子縁組と混同されることもあり、「同性カップルは『法律上』里親になれない」と思われてきたからだ。要保護児童(保護者のいない児童)のための制度としては、「特別養子縁組」があるが、縁組をするには法律上夫婦でなければならず、民法の改正が必要だ。

 しかし、里親制度は、子どもと里親の間に法律上の親子関係を作り出すものではなく、里親になれる人は夫婦である必要もない。実際、私の知人には「成人した娘とその母」で里親になった人もいれば、単身者で里親をしている人もいる。里親制度は「一定期間、お子さんをお預かりする」といった表現をされることもあり、かなり「緩やかな子育て」が行われている。

 ところが、RFCの設立以来、「役所に問い合わせたが『(男性と)結婚してから電話してきて』といわれた」という女性カップルや、「偏見にあふれた言葉を口にされた」というゲイ男性の声が寄せられ、「事実上同性カップルは里親にはなりにくい」ことがわかってきた。自治体職員が法律を勘違いしている、あるいは、偏見に満ちあふれていて否定的なことを口にしていたためだ。同時に、自治体職員が勘違いしているということは、里親のなり手である同性カップルもまた、「里親になれない」と思い込んでいると予想された。私はこのような間違った情報や対応によって、里親の人的資源が非常に残念な形で失われていると危機感を覚えた。

 今回、同性カップルが里親認定され、子育てをしていることが報道されたことで、このような「断られた」「なれないと思っていた」という状況が各地で起こっていたことが次々と判明しており、4月17日付の北海道新聞では、同性カップルの「私たちは里親になれないと思っていた」の声や法律婚でないと駄目と断られた事例を紹介している。

 私は前記のような間違った情報や対応、思い込みといった状況を改善する有効な手段は、まずは自治体から「同性カップルも里親になれる」ということをアナウンスしてもらうことだと思った。認定側である自治体が発信すれば、双方の誤解が解け、同時にマイノリティーも里親の人材として歓迎する、という自治体のメッセージにもなる。そこで、RFCは2015年に大阪市の職員と意見交換を行った。その結果、大阪市の「里親として適任者であれば、差別や偏見でもってLGBT当事者を排除することは絶対にない」というメッセージが淀川区の広報誌に掲載されることとなった。今回報道されたカップルはこのメッセージに応じた形で里親申請を行ったのだ。